劇場公開日 2007年6月2日

「醜聞なんて軽くかすんでしまう女の異常心理の怖さ」あるスキャンダルの覚え書き Cape Godさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0醜聞なんて軽くかすんでしまう女の異常心理の怖さ

2014年3月11日
PCから投稿
鑑賞方法:TV地上波

怖い

知的

難しい

総合80点 ( ストーリー:80点|キャスト:85点|演出:80点|ビジュアル:70点|音楽:65点 )

 自分自身が偏屈で頑固で人を受け入れない性格であるがために自分の家族もなく友人すらない孤独状態で、それを埋め合わせようとして歪んだ性格がさらに歪んでしまっている初老の女教師バーバラの異常心理を描く。本来は生徒と関係をもった女教師の話なのかもしれないが、この映画の主題は題名と異なる。

 主役のバーバラがジュディ・デンチだが、日常の厳格な態度とその裏に潜む激しい思い込みと欲望を素晴らしく演じている。人との繋がりがなくて休日もすることがなく、バスの車掌に偶然触れるのが男を意識する唯一の接触という生活がこの怪物を作り上げる。黒い欲望で獲物を捕らえて飲み込んでいく姿が不気味。設定がしっかりしているし演技もしっかりしているので、この登場人物の存在感がとにかく際立つ。劇中で読み上げられる彼女の心理を表す日記や心理の解説が自分よがりな彼女の本性を炙り出している。
 また弱さをバーバラにも生徒にも容易に付け込まれる新任の女教師をケイト・ブランシェットが演じ、こちらも脆さをさらけ出していく演技が上手で、事実を基にしたと言う15歳の生徒との関係なんていう醜聞なんかどうでもよくなって霞んでしまうほどに女教師二人の関係が見応えがあった。名前だけが登場するジェニファーとの関係も気になる。

 いわゆるお局さんと言われる、職場でちょっと歳を重ねている権力や人間関係に異常な執着心を持つ人に会うことがある。彼女たちの行動もまた異常と言えるようなものであり、この映画のバーバラはまさにそれを思い起こさせる。何故時々女性はこのような非論理的な激しい思い込みに囚われてしまうのかわからないが、そのような怖さが映画から伝わってきた。

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Cape God