劇場公開日 2007年6月2日

あるスキャンダルの覚え書き : 映画評論・批評

2007年6月5日更新

2007年6月2日よりシャンテシネほかにてロードショー

同性愛ではなく、孤独についての映画

これは孤独についての映画だ。初老の女教師が若く美しい同僚に異常な執着心を持つ話だが、同性愛がテーマではない。心を許した友も全てを受け容れてくれる家族もない孤独な生活が、人間の心を歪め、現実をねじ曲げて自分に都合の良い妄想を作りだしていく怖さと哀しさが描かれているのだ。

厳格で辛辣なために周囲から疎まれている孤独な教師バーバラがジュディ・デンチ。彼女が自分にふさわしい友情の相手と決めつけて、ストーカーのようにつきまとう新任教師シーバがケイト・ブランシェット。裕福で家庭もあるシーバだが、長男がダウン症であることも影響して情緒が不安定。その不安を打ち消すため、求められれば15歳の生徒とも情事を持ってしまう弱い女性だ。固く強いデンチと、柔らかく弱いブランシェット。タイプは違うが同じように心に闇を抱えた孤独な女を演じる2人がさすがの上手さ。ふたりの対照的な演技が、猛獣が襲いやすい獲物に当たりをつけるように、言いなりになりやすい弱い相手を一発で見抜くバーバラのキャラにリアリティーを与えている。小説のヒロインになったような気分で2人の交友を日記に綴るバーバラに、誰からも振り向かれない女の哀しさが貼りついて、ストーカーはこうやって生まれるのだなぁと、ゾッとした。

(森山京子)

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