「マジックというモチーフと、ノーラン演出の重ね方が面白い。」プレステージ すっかんさんの映画レビュー(感想・評価)
マジックというモチーフと、ノーラン演出の重ね方が面白い。
◯作品全体
ノーラン監督の得意技ともいえる時間軸が入り乱れる構成は、本作でも健在だった。
『メメント』では主人公の記憶を軸に映される場面が決まり、『インセプション』や『インターステラー』では主人公の意識が存在する場所が軸となっていた。本作ではアンジャーとボーデンが手に入れる、それぞれの日記をそれぞれが読むことで、映される時間軸が決まる。そしてその日記を読むことで映像によって真実が見えてくる。本作の主題でもある「マジックと種明かし」のようで、ノーラン演出との親和性がとても面白かった。
作中でも語られるマジックの要素「確認、展開、偉業」は、ノーラン演出の面白さを語っているようで、それもまた面白かった。作劇ではよく目にする同業者同士の行き過ぎた対立やマジックによる事故、男女の衝突…そういった「確認」「展開」によって観客を引き込ませ、双子の存在や複製装置という「偉業」で驚かせる。あるシーンをきっかけに驚くべき真実を見せつけるノーラン演出そのもので、メタ的な視点でも面白かった。
仕掛けとモチーフの重ね方も上手だった。冒頭のシーンをはじめ、何度も映る鳥を使ったマジックは鳥かごと一緒に鳥も潰してしまう仕掛けだ。これはアンジャーによる複製装置を使った瞬間移動とやっていることは同じだ。そしてボーデンの妻・サラは鳥を使ったマジックの仕掛けにより死んでしまう。マジックによって軽くなる命の重みが、鳥のマジックという仕掛けとモチーフによって表現されていた。
見えないところで展開されるマジックのように、映されないところに真実が存在し、そしてその真実は入り乱れた時間軸によって、後から映像で示される…「マジック」と「ノーラン作品」の親和性が独特の駆け引きを作りだしていた。
〇カメラワークとか
・ギミックがトリッキーだからか、カメラワークはすごく落ち着いていた印象があった。
〇その他
・アンジャーの複製装置がボーデンたちに知られていくところはとても面白かったけど、ラストの「ボーデンは双子だった」っていう部分の見せ方はイマイチだった。そりゃそうだろって要素を大事に見せるような演出で、ちょっとシュールだった。