「典型的なヒッチコック作品」第3逃亡者 あき240さんの映画レビュー(感想・評価)
典型的なヒッチコック作品
スタイルが確立されていて、現代の目から遡って観るとあたかも構成要素を嵌め込み式にして製作されたかのように感じてしまうほど典型的な作品
実質的な主人公は署長の娘エリカ
無実の罪で追われるロバートは狂言回しに過ぎない
エリカ役の女優が初々しく処女性を発散している上に知的で細く美しい
正にヒッチコックが好む女優の典型
彼女の母はほとんど登場せず、中年体型の叔母さんは長く映すことによってエリカをより美しく若く細いことを対比で際立たせてみせる
しかも彼女は身長が低く庇護を与えたい欲求を喚起するような配役だ
そこに勇敢な飼い犬を彼女に寄り添わせて、彼女の冒険の勇気に説得力を添えている
題名の第三逃亡者とは
ロバートとエリカ、そして三人目の真犯人を指す
だが、原題の「若さと無邪気」の方がお話の内容を的確に表現していると思える
戦前の日本の宣伝マンはそれよりもサスペンスを訴求したかったのだろう
終盤のグランホテルのロビーからレストランまでをクレーン撮影で俯瞰して真犯人の居場所を登場人物より先に観客に提示する手法は見事なシーン
全体から核心に一気に近付いていくショットは、その後のヒッチコック作品でも多用されていく
レストランで演奏するバンドメンバーが黒人を模して顔を黒く、口の周りを赤く塗っている
現代では人種差別だと糾弾されるメイクだ
この時代は何も問題意識がなかった
しかし現代の目からこの映像をみると、やはり漫画的にデフォルメしてあり無意識の差別意識が働いていると言われてもしかたが無いことがわかる
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