「戦争への過程。」ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団 movie mammaさんの映画レビュー(感想・評価)
戦争への過程。
ハリーはただでさえ思春期で、繊細で、イライラしているところに加えて、
・セドリックディゴリーは亡くなる
・ヴォルデモート復活
・それを周りが信じない
・ヴォルデモートと思考が繋がってしまい寝てもうなされて休まらない
・マグル街にまでディメンターが現れて守護霊呪文を使い、尋問にかけられる
・魔法省(ファッジが省庁、子分は忠誠心大好きのドローレス)がホグワーツを干渉し、ドローレスというピンク教科書おばちゃんが学校で権限を増していく
・ダンブルドアがヴォルデモートを刺激しないためわざとハリーを遠巻きにする
抱えきれないほど悩む事たくさんなハリー。
心の余裕がなくなり、カッとしやすくピリピリしている。
感情がスプーン一杯のロンがいなければもっと交友関係は荒れていただろう。庇ってくれるロンにさえピリピリしてしまうハリー。
ピンク教科書おばちゃんは典型的イギリスおばちゃんに見えるが、実際、残酷で手段選ばず、自分への忠誠が絶対という人間。ファッジの子分として、都合の良い決まりを次々にもうけては生徒の自由を奪い、禁止し、罰で支配をして権力を得たいだけのおばちゃん。
みんなが手を焼くこのおばちゃんに禁止されて、ヴォルデモートが迫っているというのに、闇の魔術への実践的な授業が受けられなくなった生徒達は、ハーマイオニーとロンの提案でハリーを講師にして密かに団結しダンブルドア軍団を結成して、戦い方を学び始める。
命の危機に何度も瀕しているハリーは、これまで戦ってきたことはすごいのではなく、殺されるか目の前で友達が死ぬかの命からがらだったんだと話す。
まるで戦争で勲章を得た人の言葉。
魔法省と闇側と立ち向かうもの達の集団同士の対決に子供が巻き込まれていく。規則や法や校則で縛り、有無を言わせず自由が阻まれていく。教科書命は思考統制。気付かぬ間に忍び寄り支配を増やしていく闇。まるで戦争への過程。
それを子供達が自分の頭で考えてどう立ち向かうか知識を応用させ実践に移していく事を、良しとするのがホグワーツ。統制は取れていないけど、根幹を大切にするダンブルドア。
ダンブルドア軍団のメンバーの集まりが本作の楽しいところ。
・エクスペリアームズ武器よ去れ
・ストゥーピファイ失神の呪文
・レダクト粉々
・エクスペクトパトローナム守護霊の呪文
こればっかりなのだが、興味の範囲だったクラスメイト達が真剣に取り組み力をつけていく。
迷う事なく不死鳥の騎士団で戦うと言うハリーだが、他のみんなはどうしていくのか。戦いに参加して平和のために活動しながら、家族を守り日常生活を送っていかれるのか。万が一亡くなれば子供も皆殺しにされたり、子供が孤児になったりする。
戦争は本当に恐ろしい。
光と影両方あり、どちらを選ぶかでその人が決まる。
シリウスが言うその通りだが、そんなの通用しない、ルシウス家のような例もある。
「もう危なくなることはしない。大切に思うものが増えれば増えるほど、失った時が辛くなる。だからもういっそ1人のほうが良い。」とハリーは言っていたが。
ハリーの予言を求めてヴォルデモートが来る魔法省秘密部のデータセンターのような場所に、ハリーだけでなく友達も危険を承知で来てくれた。
ダンブルドアと騎士団が来るまでの間、みんなでどうにか対抗する。
が、今作ではシリウスが亡くなる。シリウスのいとこのベラトリクスに何の躊躇いもなく殺されてしまった。
ハリーはまた家族を失った。
でも、ハリーには、ヴォルデモートと違い、恐怖で支配をしなくても自分のために戦ってくれる、友達がいる。心を暖めて安心させてくれる想い出が人を強くする。
ハリーに全部ひとりで抱えるなと言ってくれるロン。
ロンとハーマイオニーも随分通じ合ってきた。
ハリー、チョウチャンとキス、セドリックディゴリーの写真の前で!!同じく母を亡くしたルーナとも心が通じ合う。スネイプもハリーがヴォルデモートに操られないよう、呪文をかけた相手の感情や記憶を読み取るレジリメンス呪文に抗う訓練に随分協力してくれて、実際乗っ取られずに済んだ。
人間関係はうまくいっているようで、、
ハリーの父がスネイプを卑劣に快楽的にいじめていた事実。。
「人生とは不当なものだ」と語るスネイプが、虐められたその記憶を克服しながらも、ハリーにも憎しみを転移させながらも、闇への対抗に手を貸している、自己統制の強さ。闇に系統もしたが、戻ってきたその人間性の積み重ねこそが、生徒にとって精神鍛錬の教科書である。