「幾ら何でもはしょり過ぎ…」ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
幾ら何でもはしょり過ぎ…
シリーズ5作目。
いきなりだけど本作、言わして貰いたいのは、はしょり過ぎ!
確か原作はシリーズ最長なのに、映画では最短というある意味ミラクル!
比率的に原作の半分ほどしか映像化出来ていないだろう。
以下、不満点。
冒頭のダーズリー一家のカムバックはいい。ダドちゃん、ちょっとだけ出番増えた。
そのダドリーを襲ったディメンターを守護霊の呪文で撃退したハリーに魔法省から厳しいお達しが。
そこへ、ダンブルドアのメール便がペチュニア叔母さんに届き、ハリーと叔母の繋がりを感じさせる意味深なシーンがあった筈なのに、何も描かれず次のシーンへ。
魔法省からのお目付け役としてやって来た新教授、アンブリッジ。
趣味の悪いピンクの服にピンクの部屋、イラッとする笑い方、魔法省の権力を盾に何かと規則を作り、特にハリーを徹底的にマークし罰を与えるクソババア。
イメルダ・スウィントンの巧演で嫌みたっぷりだが、原作ではもっとムカつく。何度ハリーに虐待的な罰を強いたか。
ハリーの仲間たちのエピソードはことごとくカット。
監督生になってちょっと踏ん反り返るロンが見られず残念。
そのウィーズリー家の確執、父アーサーと魔法省側に付いた三男パーシーの仲違いは描かれず。(パーシーなんてただの背景)
屋敷しもべ妖精はブラック家の醜悪な新キャラが出るだけで、前作に続きドビーらは登場せず。よって、ハーマイオニーの“屋敷しもべ妖精にも人権を!”運動はナシ。
ガッカリしたのは、ネビルと精神病院に入院している両親。闇祓いとして死喰い人と戦い、磔の呪文による拷問で廃人となった両親をネビルが見舞うサブのサブだが、非常に胸打つエピソードだったのに、カット。
同じ病院に入院しているロックハートは…ま、いっか。
スネイプから閉心術を教わるハリー。
ある時、スネイプの閉ざされた心に入り、見てしまったスネイプと自分の両親との過去。
最終作への最大の伏線。
ああ、もっと克明に描いて!
衝撃的なのはラスト。
闘い終え、ダンブルドアから自分とヴォルデモートの宿命を聞くハリー。
本作の最重要シーンと言っても過言ではなく、原作ではたっぷりと描かれるのに、一言二言かいつまんだだけ。
えっ、それだけ!?
また、激戦の最中、ハリーは“大切な人”を失う。
激しい悲しみに暮れる筈が、一応映画でもそう描かれるが、あまりその感情が伝わって来ない。
…などなど。
膨大な原作をハリーをメインに要所要所纏めた苦労は勿論分かるが…
はしょり過ぎてせっかく深みや広がりあるドラマを削ぎ落としてしまったのは残念で仕方ない。
ラストバトルも呆気なく、何もかもがダイジェスト的。
そのくせ公開時、ハリー初のキスシーンばかり話題になって…。
映画の作りが残念だっただけで、元々の話の中身は面白味が沢山。
ヴォルデモートの復活を巡り、それを信じるダンブルドアと信じない魔法省の間に亀裂が。
ヴォルデモートと闘う“不死鳥の騎士団”。マクゴナガル、スネイプ、ハグリット、ウィーズリー夫妻らレギュラーメンバーに加え、「アズカバンの囚人」からシリウス、ルーピン、「炎のゴブレット」からムーディがカムバック。新キャラも登場し、オールキャスト!
一方のハリーらもアンブリッジ体制のホグワーツで、“DA(ダンブルドア軍団)”を結成。自分たちだけで闇の魔力と対する術を学ぶ。
メイン舞台の一つとなる魔法省。出勤時の様子、神秘部、不思議なアーチなど魔法省内部が初めて描かれる。
それから、フレッドとジョージの独立も。
本作はハリー試練の一年。
ヴォルデモートの復活を目撃したハリーに対し、魔法省からの重圧、アンブリッジからの罰、生徒たちからも嘘つき呼ばわり。
額の傷の激しい痛み、ヴォルデモートとの繋がりに苦しめられる。
“大切な人”の死。
絶対無二の頼りの存在である筈のダンブルドアが自分と目を合わせてもくれない…。
怒り、苛立ち、悲しみ、苦しみ、耐えるハリーを見ているだけで悲痛。
ましてや自分とヴォルデモートの宿命は、15歳の少年が対峙するには残酷。
しかし、少年はその宿命を受け入れ、避けられない闘いを決意する…。
それにしても、デヴィッド・イェーツ監督が「ファンタスティック・ビースト~」まで続投するとは思わんかった…(^^;