ダーク・ハーフのレビュー・感想・評価
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トゥ・フィ, エゴ・エリス
勝手にスティーヴン・キング特集その22! 今回は1993年公開のサスペンススリラー『ダーク・ハーフ』をご紹介。 監督はホラー映画界の巨匠ジョージ・A・ロメロ。主演は『普通の人々』等のティモシー・ハットン。 また、キング作品で幾度も登場するアラン・パングボーン保安官役は、『ガーディアンズ・ オブ・ギャラクシー』『ウォーキングデッド』等で人気のマイケル・ルーカ―だ。 あらすじ。 主人公サド・ボーモントは、純文学作家として作品を発表するかたわら、“ジョージ・スターク” という別名義でバイオレンス小説を書いていた。スターク名義の作品は売上げは良かったものの、 スターク名義で執筆中のサドは別人のように気性が荒くなり、サドの妻もそれらの作品を嫌っていた。 ある出来事をきっかけに、サドはスターク名義を葬ることを決意。実際に墓まで建て、 ジョージ・スタークを埋葬する自分の写真を雑誌に掲載する形で世間に秘密を公表した。 だがその日を境に、“埋葬”に関わった人間が次々と無残な死を遂げてゆく。 犯人は……ジョージ・スターク。葬儀をきっかけに、彼はサドと別個の存在として現実化したのだ。 サドは、自身の暴力性を凝縮したような邪悪な半身(ダーク・ハーフ)との対決に臨む。 ... 『ペンネームが現実化する』という突拍子もないアイデアだが…… 元々は双子だった胎児が、胎内で片方に吸収されて1人になる現象を“バニシングツイン”といい、 一説では双子妊娠の実に30%がこの事例に当てはまるんだそうな。映画の冒頭でも示される通り、 主人公も元々は双子で、それまで精神で繋がっていた片割れが、別人格として切り離された流れ。 まあ、そう説明しても超自然的過ぎてピンとこないかもしれないが……。 この“バニシングツイン”や、双子間の精神感応がもたらすサスペンス、 “サイコポンプ(霊魂の導き手)”として登場するスズメなど、 小説ならともかく映像で納得させるには困難とも思われる物語の流れを、本作は見事に映像化。 93年の映画なのでアナログな特殊効果が主体だが、陶器の顔が割れる演出やクライマックスの アレの大襲来など、今観ても十分にビジュアル的インパクトを受ける演出は数多い。 現代ゾンビ映画の始祖として有名なジョージ・A・ロメロだが、やはりゾンビ映画に限らず 恐怖映画そのものの表現者として一流だったのだと改めて思う。彼のグロテスクかつ悪夢的な 映像演出が原作の世界観にピシャリとハマった本作は、キング原作映画でも出色の出来ではないか。 あと双子の赤ちゃんめっちゃ可愛い。 ラストがあっさりめに終わってしまう点は惜しいし、ティモシー・ハットン演じるジョージ (サド役と1人2役)にはもっと残忍さとシャープさを感じられれば良かったが、優しい風貌に 時折暴力性が見え隠れするサド役の演技は良かったので、正直言ってこれは贅沢な不満点だろう。 あと双子の赤ちゃんめっちゃ可愛い。 観て損ナシの3.5判定、と考えたが、個人的にお気に入りなのでちょっと高めに4.0判定で。 ... 最後に、本作自体とはやや関係ない話だが、 原作者のスティーヴン・キング自身、“リチャード・バックマン”という名義でこっそりスタイルの 違う作品(『死のロングウォーク』『バトルランナー』等)を書いていたのはファンには有名な話。 『ダーク・ハーフ』はこの“バックマン”=キングであることがバレたのをきっかけに執筆されたんだと。 バックマン名義の作品は通常のキング作品と比べ、より現実的で生々しいサスペンス作品が多い印象。 別に元々が双子でなくても、普段の自分ではできないことをやってのける、 開放的で危険な自分を内に抱えているものかも知れないねえ、人間て。 なおキング曰く、バックマン氏は1985年に“偽名癌”という奇病でお亡くなりになったそうな。 惜しい人を亡くしました。な~む~。 <了> ※2018.10初投稿 . . . . 余談: もう昨年の話になってしまうが、ジョージ・A・ロメロが亡くなってしまった。享年77歳。 娯楽性十分な恐怖映画のなかに巧みに社会的テーマも取り入れる名匠だったと思う。 本作以外でも幾つもの作品でロメロと関わったキングもその死を哀しみ、 「君のような人はもう二度と現れない」とツイートを寄せている。 同感である。最後まで尖った作品を作り続けた彼のご冥福をお祈りします。
スズメが舞うとき奇跡は起きる
・作家サッドの頭に取りついた双子の腫瘍を埋葬したらゾンビとしてよみがえってしまった ・カミソリでスパスパ殺される周りの人びと ・おびただしい数の雀が家に入ってくるのはヒッチコックの鳥を連想させるが恐怖はない ・双子の赤ちゃんのリアクションがことごとく可愛いのが唯一の見所
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