「楽しくなければエンタテイメントじゃない」ロッキー・ザ・ファイナル こもねこさんの映画レビュー(感想・評価)
楽しくなければエンタテイメントじゃない
最近、歯を磨いたあとのうがいで、水が歯茎に染みて痛さを感じるたびに、クリント・イーストウッドの「スペース・カウボーイズ」の最初の部分で、歳よりも若いことを強調するかのように、固い氷をボリボリ食べるイーストウッドの姿を思い浮かべて、「俺のほうが歳とるのが速いみたいだなあ」なんてつぶやいしてしまう、のですが、
この「ロッキー・ザ・ファイナル」は、その固い氷を食べるようなことを、後半の大部分に費やした、ある意味、贅沢なエンタテイメントです。
もう50を越えた往年のヘビー級王者ロッキーバルボアが、夢を求めてもう一度リングへとあがる物語。いかにもアメリカ映画らしいトゥルー・オブ・ドリーム話で、
ノスタルジー丸出し、しかも落としどころが死んだ妻などに捧げる家族愛など、いい加減、使い古されたストーリーと鼻白むような演出の数々なのに、ボクシングのためのトレーニングや試合になると、観客は客席から身をのりだし、最後には感動の渦に巻き込まれるのは、まさに生粋のエンタテイナーであるスタローンの魅力とそんな映画が撮れる腕によるところが大きいのですよ。
以前からそうですが、スタローンが製作する映画には、難しいことなど言わせない、映画本来の魅力に満ち溢れているのが素晴らしいところ。それは昔のクロスビーやアステアのミュージカルのように、定番の内容なれどついつい映画館に足を運ばせる、エンタテイメントを常にスタローンは提供し続けているからなのです。
そういう映画というのは、評論家連中や芸術家肌の映画鑑賞眼をもった人には、バカにされやすいものです。でも、思い出してみてください。日本でも映画が娯楽の中心だったころ、毎度おなじみの筋立ての「若大将シリーズ」や「無責任シリーズ」に多くの人たちが熱狂していたではないですか!!。
この作品でも、今までのロッキーシリーズと同じようなのですが、それでもさわやかに、そして楽しい気分で見終わることができる。このせちがらい世の中で、そんな体験ができたのは貴重だったなあ、と私は感慨深いものがありました。
ですから、とやかく言うのはヤボというもの。エンタテイメントを素直に認めない者は映画を見る資格はない、との個人的な意見もあってなのですけど、この作品に出会ったことへの喜びが今も心に染み渡っています。
ロッキーのような映画を見たあとに、興奮した心を落ち着かせるのは、お香が一番、なんてね。年寄りかなあ。
そうなんですよね~
映画ってのは娯楽作品なんだから、見終わったあとに幸せな気持ちになってないと!
モヤモヤしたり、陰鬱な気分になるような映画はもってのほか…
芸術性だの、リアリティーだのはグランドキャニオンにでも棄ててこい(笑)