ラブ・オブ・ザ・ゲーム : 映画評論・批評
2000年1月29日更新
2000年1月29日より丸の内ルーブルほか全国松竹・東急系にてロードショー
コスナーの野球映画最終作にして最高の傑作
ケビン・コスナーの野球映画第3作目。彼の〈復活〉を祝福したい。
これまでの野球映画ではドラマを一試合に絞り込むということはなかった。この映画は、主人公でデトロイト・タイガースのベテラン投手、ビリー・チャペル(コスナー)が引退を決意したシーズン最後の登板試合の朝から翌朝までのお話。ビリー最後の一試合に絞られている。このシンプルさがたまらなくイイ。
その一試合にビリーという男の人生を凝縮してみせる。人生の裏表を野球の攻守、表裏の駆引きになぞらえる。野球が人生であるビリーの、人生は野球と同じゲームのようだ、という一見単純、じつは複雑な〈哲学〉を監督サム・ライミは叙情的に謳い上げる。ライミ監督の確かな〈手腕〉に驚嘆する。
スタンドからのヤジ、ブーイング、相手チームからの猛烈なけん制…そうした〈雑音〉にビリーは「消去!」と自分に言い聞かせる。次の瞬間、音がサッ~と消え、マウンド上のビリーにフォーカスが合い、スタンドの光景がぼんやり、残像のように流れていく。画面 中央にビリーが浮かび上がる。名場面である。こんな映像も、いままでの野球映画にはなかった。快挙な映像。アッパレだ!
(田沼雄一)