劇場公開日 2000年2月26日

遠い空の向こうに : 映画評論・批評

2000年1月29日更新

2000年2月26日よりシャンテ・シネほかにてにてロードショー

宇宙に夢を抱いた少年たちの感動の実話

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「珠玉作」という言葉があるが、「遠い空の向こうに」は掛け値なしでこの言葉に当てはまる、希有な作品だ。

50年代のさびれた炭坑町で、少年ホーマーは、見上げた空に希望を見いだす。仲間と協力し合い、大人たちに助けられ、困難を乗り越えようとする。テー マは「夢」。夢を持つこと、人間が互いに支え合い、理解し合うことの素晴らしさ。これらひとつひとつのモチーフを、じっくり、自然に、ストレートに胸に響かせるのである。特にホーマーと典型的な昔気質の炭坑夫である父親の、複雑な心理、葛藤を、手堅くも繊細に綴っているのがいい。ホーマーの触れる人々の優しさやラストのクライマックスで胸がいっぱいになるのは、こうした描写 が生きているからこそ。

原作はホーマー・ヒッカムによる自伝「ロケット・ボーイズ」。監督は、「ロケッティア」などで飛ぶことへの憧れにこだわってきたジョー・ジョンストン。底の薄いコミック映画の監督だと思っていたら、大化けである。彼の原作への共感が、観客の共感を呼ぶ叙情作を生み出した。原作と監督にとっても幸せな出会いだが、観客にとっても「出会ってよかった」と思えること請け合いだ。

若林ゆり

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