「人への憎悪は「のろい」で苦しませ、人への愛情は「まじない」で救う」スリーピー・ホロウ スモーキー石井さんの映画レビュー(感想・評価)
人への憎悪は「のろい」で苦しませ、人への愛情は「まじない」で救う
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本作の舞台は19世紀目前のアメリカ・ニューヨークから遠く離れた
「スリーピー・ホロウ」という村落。
そこで、首のない騎士が村人たちを襲うという奇怪な事件が起こる。
本作の主人公は過去のトラウマからか
聖書や神、伝説やオカルトの類は一切信じず、
理性と良識を重んじ、知識と科学技術で真実を見極めようとするNY市警の捜査官である。
故に当時当たり前のように行われた拷問による自白の強要や宗教観に基づく習わしには非常に懐疑的で上席に反発的な態度をとる。
そうして、当時としては先駆的な刑事が「鼻つまみ者」として僻地の奇怪な事件を担当することとななり、幽霊との格闘・現実社会の人間模様の捜査を通じて、被害者たちの共通点・犯行の法則・動機、そして事件の真の「黒幕」をあぶりだしていく。
本作の主題は「呪い」と「おまじない」
悲しい過去を持つ超理屈屋の刑事が「呪い」に翻弄され、「おまじない」に救われることで
成長する物語でもある。
また、アクションシーンや本当にあったであろう犯罪捜査や今も昔も変わらない相続争いやムラ社会の負の側面は鑑賞していてとても感慨深い。
ホラーやファンタジーともいえるし、サスペンスや当時の慣習を知る社会派作品ともとらえることができる。
最後にこの世の中にはまだ「非科学」的なものは存在するらしい。
本作を読み解くのも「非科学」的な「呪い」や「おまじない」がキーワードとなっている。
「呪い」は憎しみの対象を苦しませ、「まじない」は愛する対象を救う。
愛憎は紙一重である。その願いは「呪い」か「まじない」か?
悪魔になる前に立ち止まって考えてみたい。
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