スリーピー・ホロウ : 映画評論・批評
2000年2月15日更新
2000年2月26日より日劇ほか全国東宝洋画系にてにてロードショー
ティム・バートンが仕掛ける魅惑的な悪夢
これはティム・バートンのおもちゃ箱をひっくり返したような映画だ。彼の大好きなおもちゃたちがスクリーンの隅々にまで満ちあふれている。
たとえば、子供のころ夢中になったというハマー・フィルムへのオマージュ、お気に入りの役者たち、闇に浮かび上がる首なし騎士、不気味でファニーな魔女、そしてアイアン・メイデンやハロウィンのカボチャ、役立たずのくせに妙に凝った造形の捜査グッズ……数えだしたらきりがないくらい。しかも、それらが、メキシコ人のキャメラマン、エマニュエル・ルベズキー(「リトル・プリンセス 小公女」)の力を借り、ダークファンタジーの世界を構築するのに貢献しているのだ。やはりバートンは世界を作る監督なのだと改めて確認してしまうほど、それは素晴らしい。言い方を換えるなら、彼にはおもちゃをアートに昇華させる才能があるということなのだ。
確かに、多くの人はこれに酔うことができる。その世界に入り込むことができる。だが、残念なことにバートンの心のなかに入ることはできない。なぜなら、彼の叫びが聞こえてこないから。彼のディープなファンを自称する向きには、これがちょっと寂しい。
(渡辺麻紀)