「ピアース・ボンドは永遠に」007 ダイ・アナザー・デイ 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
ピアース・ボンドは永遠に
シリーズ20作目。2002年の作品。
生誕40周年で21世紀最初の007で、ピアース・ブロスナン最後の007でもある。
色々話題の多い一作。
本作を見るのは翌2003年の日本劇場公開時以来17年ぶり。前3作は何度か見てるのに、本作は一回くらいしか見てない筈。断片的に覚えてる所もあれば、どんな任務内容だったかほとんど…。ほぼ初見のつもりで。
ダイヤモンド商人に成り済まし、危険人物であるムーン大佐抹殺の為、北朝鮮に潜入したボンド。
が、側近のザオに素性がバレ、一戦。ダイヤの下に仕込ませた爆弾を爆発させザオの顔に怪我を負わせ、ド派手なホバークラフト・チェイスの末、ムーンを滝に落とす。
いつものプレ・シークエンスであるが、ムーンの父の将軍によって捕らえられてしまう。
タイトル・バックは、壮絶な拷問シーン…。
衝撃的な展開で幕開け。
14ヶ月後、釈放。アメリカに捕らわれていたザオとの人質交換。
これには訳が。
ザオは逃亡先で中国やアメリカの諜報員を殺害。その情報の出所が、ボンドが捕らわれていた北朝鮮の刑務所。
ボンドが内通者として疑われ、やむなく…。
帰還したものの、幽閉の身。さらにはMから00ナンバーを剥奪されてしまう…!
自らの汚名返上やプライドを取り戻す為、脱走してザオを追う。
ザオが潜伏している情報を得、ハバナのDNA治療病院へ。
そこで出会ったのが…、
あれ? 何処かで見た事あるぞ。
言わずもがな。第1作目のウルスラ・アンドレス演じる初代ボンドガールを彷彿させるビキニ姿で海から上がってくる登場シーン。
演じるは、ハル・ベリー。
撮影中に『チョコレート』でオスカーを受賞し、初のオスカー・ボンドガールに。また、初のメインの黒人ボンドガールでもある。これまた快挙。
シリアスもアクションもセクシーも出来、ボンドガールにぴったり。実際、彼女演じるジンクスのスピンオフの企画があり、かなり進行していたとか。が、『チャーリーズ・エンジェル/フルスロットル』や『トゥームレイダー2』など当時女性主演アクションが興行的に不発し、結局白紙に。また、ベリーも『キャットウーマン』に出演してその後キャリアが低迷。
色んな“ジンクス”が重なってしまったが、この時はキャリア絶好調!
それを知らしめる登場シーンとセクシー・ダイナマイトボディ!
ジンクスはアメリカNSAエージェント。
協力し合い、出し抜き合い、時にベットインしながらザオを追う。
やがて、ザオとイギリスのダイヤ王、グレーヴスの間に何らかの関係がある事を掴む。
Mから再び00エージェント復帰を言い渡され、アイスランドにあるグレーヴスの氷の宮殿で開かれる盛大なパーティーへ。
そこで、グレーヴスの驚くべき正体と陰謀を知る…!
北朝鮮が舞台にもなり、韓国系アメリカ人やアジア俳優を起用。ザオ役のリック・ユーンが顔にダイヤの破片が残る異形で怪演。
サブキャストで印象残るは、もう一人のボンドガール、ロザムンド・パイクだろう。
フェンシングにも長けるグレーヴスのPR係のフロスト。でも実は…、でも実は…と、二転三転するキャラ。
当時はベリーの方が圧倒的に人気あり、パイクはまだそれほど。しかし今ではパイクの方が売れっ子に。何とも皮肉なようでもある。
主題歌はマドンナ。フェンシング・シーンに出演もし、主題歌担当のシンガー出演はこれが初とか。が、あれだけのシーンなのにラジー賞(助演女優)受賞とはさすがです!
アクションの見せ場は、
プレ・シークエンスのホバークラフト・チェイス!
氷上のカーチェイス!
“イカルス”始動! その強烈な太陽光線から逃げ、氷の宮殿破壊。その中で、ザオとの戦いやジンクス救出。
そして、グレーヴスとの決戦。墜落寸前の飛行機からの脱出…!
迫力もハラハラドキドキお楽しみもたっぷり。
お楽しみと言えば、過去作品へのオマージュやニヤリとする小ネタの数々。
ジンクス登場シーンは勿論として、
ジンクス絶体絶命のレーザー光線は『ゴールドフィンガー』。
ホテルの部屋での隠し撮りは『ロシアより愛をこめて』。
グレーヴスがユニオンジャックのパラシュートでヘリから降下するシーンは『私を愛したスパイ』。
また、Qの工房には過去登場した秘密兵器がいっぱい! あの名兵器やあの珍兵器も。(前作でアシスタントだったジョン・クリーズが正式に2代目Qに就任。名コメディアンでもあり、ボンドとの軽妙なやり取りも良かったが、次作の一新でこれで見納めになってしまったのが残念で仕方ない!)
シーンや小ネタ多いが、ダイヤやそれに絡めた陰謀など話や展開も過去作品を彷彿。そんな黒幕、過去に結構居たね~。
沢山面白味を詰めたアニバーサリー007。
が、採点はピアース・ボンドの中では一番低めに。
と言うのも、話そのものがそれほど面白味ナシ。前3作は現代的な要素を取り入れているのに対し、本作は過去作品のような少々チープな大陰謀! それはそれでオマージュかもしれないが、何だか荒唐無稽。(このリアリティーの無さが、ブロスナンがボンドを降りる理由の一つでもあるとか、無いとか)
北朝鮮が悪役というのは(失礼ながら)現代的でもある。が、実際はどうか知らないが、拷問や殺しも厭わない野蛮人として描かれ、北朝鮮から見れば愉快ではないわな。北朝鮮から本作に対し猛批判の声が上がったらしいが、まあ肯定も否定も…。
グレーヴスの正体やフロストの立ち位置も何となく。
ジンクスも戦う強いボンドガールという設定なのに、結構敵に捕まって、オイオイ…。
荒唐無稽さが007だが、本作はピアース・ボンドの中でもそれが目立ち、あくまで個人的見解で有終の美を飾れず。
が!しかし!
オールド・ファンにとってボンドはショーン・コネリーやロジャー・ムーアかもしれないが、私にとってリアルタイムの最高のボンドはピアース・ブロスナン!
今のダニエル・ブレイクも非常にいいが、あちらがリアルなボンドとすれば、ブロスナンはイメージ通りのTHEボンド!
ピアース・ボンドは永遠に。
余談。
ぐお~~~ッ!やはり~~~ぃ!
『ノー・タイム・トゥ・ダイ』がまたしても延期になってしもうた~!
製作上の都合やコロナ影響でこれで何度目よ!?
今年の4月から11月へ本決まりとなり、せっかく今シリーズ再見している真っ最中なのに~~~ぃ!
まあ、仕方ない。イギリスでまたコロナ感染者が増えてるらしく、アメリカでも未だ多く(暖かくなれば魔法のように消えると豪語していた独裁者も感染(((*≧艸≦)ププッ)、ダニエル・ボンドの有終の美を飾りたいからね。
次のダニエル・ボンド初任務『カジノ・ロワイヤル』は来年4月の公開近くになってからにするか。
ちょうどピアース・ボンドのラスト作だし、一旦007レビューはこれで休止します。