ストレイト・ストーリーのレビュー・感想・評価
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素晴らしプラス・マイナス・ゼロの旅路
ある日、アメリカの田舎町に住んでいた老人の家に、長年に渡り仲違いしていた兄が病で倒れたという連絡が入る。
仲直りする最後の機会だと悟った彼は、オンボロトラクターに乗り、遥か彼方に在る兄の家を目指して、6週間にも渡る遠い遠い旅に出る。
ただそれだけの話である。
山場らしい盛り上がりも無ければ、怒涛の感動を呼び起こすクライマックスも無い。
のほほ〜〜んとトボケたお爺さんが、広い大地と遥かな大空の狭間で、ただずっとトラクターに乗って、兄の家に向かう過程を実にノ〜〜ンビリ撮らえている。
でも、なぜか泣けるんだ…。
何も無いこと、
プラス・マイナス・ゼロで生き続けることって、本当は物凄く意味があるのかもしれない。
スクリーンの中に、魅力的な人間が1人でも居てくれたら、それで充分なんだ。
主役のお爺さんが、とてつもなくイイんだ。
自分自身が持っている“何か”をさり気なくオープンに醸し出している。
優しさや素朴さみたいな簡単な言葉では言い表せない“何か”を全て。
学生時代に観た時もジ〜〜ンとしたけど、介護福祉士と成った今やと、なおさら彼の表情が胸に来る。
今作が完成した数ヶ月後、惜しくもお爺さんはこの世を去った。
鬼才デビット・リンチは、彼に
「この役のために生まれてきた役者」
という言葉を捧げた。
お爺さんは、どんな想いで最後の瞬きをしたのだろう。
では、最後に短歌を一首
『今はただ アイツの顔が 見てえんだ 長い旅路を ゆっくり往くさ』
by全竜
ただただ美しいロードムービー、自分にはまだ早いかも。
デビッドリンチによるアメリカの風景も人々も美しい映画。古き良きアメリカといった感じ。
もっと年齢を重ねてから見たら、感銘を受ける事も多い映画かもしれないが、今の自分にはまだ美しい映画でしかない気がした。
まさに“ストレイト”ストーリー!
「まっすぐなお話」ではなく、「ストレイトさんの物語」です。
白髪に白ヒゲのアルヴィン・ストレイトは73歳。
いつも白いテンガロンにジーンズ&ネルシャツ。
腰が悪くて歩く時は両手に杖。
視力も落ちてきていて、その他にも体は持病(予備軍)の総合商社状態。
雷雨が好きで葉巻の似合う愛すべき田舎のオジイです。
10年来会っていない兄のライルが脳卒中で倒れたという知らせを聞いて
時速8kmのトラクターに乗って500km先のウィスコンシン州へ旅立つという物語。
そして始まる旅路の途中で出会うあたたかい人たちとの触れ合い。
これがこの映画の全てといってもいいです。
オジイのフィルターを通して観る者が出会う様々な人間模様は
小さなエピソードの集合体のなかをオジイのトラクターでゆったりと通り抜ける感覚。
外見から一目で危険のない人懐っこさがにじみ出ているオジイのキャラクターには
誰もが警戒することなく心を開いて近づいてきます。
そしてオジイもまた積み重ねてきた人生の経験から色々なストーリーを語りかけます。
説教臭い語り口ではなく、純粋に経験談として語られるストーリーは誰しもの心にストレイトに響く。
それはもちろん見ている側も同じ。途中途中で心にじ~んとくるお話の数々…。どこまでもイイ空気です。
全編を通して映し出される広大なトウモロコシ畑の中を地平線まで真っ直ぐ伸びる1本道。
夜ごとにキャンプファイヤーの傍らで仰ぎ見る星空は、僕らの知っている夜空の何倍もの星の数…。
どこにも寄り道せずに真っ直ぐ目指す兄の元…
もういい加減クドくなってきましたね(笑)
そうです。冒頭では「まっすぐなお話」ではなく「ストレイトさんの物語」としましたが
作品全体を流れるテーマがまさにストレイトストーリーなんですね。
この作品を観るにあたって批評や評価なんてものはもうどうだっていいんです。
純粋にいい時間をゆったりと過ごせる最高のロードムービー。
ラストのあの空気に言葉は必要ありません。
DVD買います!
※他サイトより転載(投稿日:2008/03/15)
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