ナインスゲート : 映画評論・批評
2000年5月15日更新
2000年6月3日より丸の内プラゼールほか全国松竹系にてロードショー
デップ+ポランスキーが誘う悪夢の迷宮
次々と開いていく中世風のゲート。きっかり9番目(数えてた)が開くと、画面 はビカーッと光のなかへ。禁断の悪魔祈祷書をめぐる冒険の開幕だ。ニューヨークに住む古書ディーラーが、世界に3冊しか現存しない悪魔書の真贋を究めるために、スペイン、ポルトガル、フランスへ。次々と怪死を遂げる関係者、誘惑する富豪の未亡人、危機を救う謎の美女……果たして真実は解明されるか!?
ポランスキーの新作は、こんな具合に娯楽性ばっちり。古書といっても問題になるのは「言葉」ではなく「挿し絵」。つまり、パズルによくある「まちがい探し」のお話で、「ローズマリーの赤ちゃん」以来の悪魔モノだからといって、深いものを期待してはいけない。「ローズマリー」的なのはむしろ、同じJ・デップ主演で、悪魔の子ならぬ 地球外生物の子を孕む女性の恐怖を描いた「ノイズ」だろう。だが映画的に トホホだったあちらに比べて、この新作には、やはりオカルト本家の血が脈打っている。
「薔薇の名前」を思わせる迷宮的な古書の世界。ヨーロッパの背徳の香り。現役“逃亡犯”である監督の手にかかると、やはり並みの娯楽作にはない、何やらイケナイものが醸し出されてしまうのだ。
(田畑裕美)