劇場公開日 2000年5月27日

「2001年宇宙の旅の大衆向け廉価版」ミッション・トゥ・マーズ あき240さんの映画レビュー(感想・評価)

4.02001年宇宙の旅の大衆向け廉価版

2019年1月16日
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鑑賞方法:DVD/BD

宇宙空間や火星のシーンはかなり頑張って科学考証をしているのは分かる
いや、してもらっているのが分かる
相当なSFマニアや宇宙関係のプロフェッショナルからひとつひとつ教えてもらいながら、製作されているのが画面から伝わる

つまり製作陣が本当の意味では科学考証の理解が及んでいなく、底が浅いのが透けて見えてしまう
そこが残念という意味だ

大まかにいうとだいたいオーケーで素晴らしいシーンも多い
しかし、所々で致命的レベルの間違いがあり一気に醒めてしまうのだ

テーマも絞り切れていない
遭難した火星ミッションの救出劇なのか、異星人との遭遇あるいは未知の宇宙の果てへの旅立ちであるのか、それとも宇宙空間や無重力の驚異を描くのか

第一であれば、リドリースコット監督がオデッセイとして十数年後にそこだけに焦点を当て切り出した作品を作っている
ほとんど本作のリメイクと言っても良い内容だ

第二ならば、ズバリ2001年宇宙の旅だ
ボーマン船長がジムに置き換わっている
つまり火星での遭難、救出ミッションはHALとの闘争に相当するサスペンスという相似形をなす
他にも、本作の3年前のコンタクト、十数年後のインターステラーという名作がある

第三なら、ゼログラビティとしてこれも十数年後にそこだけを切り出した本作のリメイク的な作品として製作されている

デ・パルマ監督の意図は第二であるだろう
しかし最初に述べたように、キューブリック監督自身が科学考証にかなりのレベルまで本当に理解して製作出来ていたのに対して、デ・パルマ監督は上っ面であったことだ

結果として本作は2001年宇宙の旅の劣化リメイクというか、大衆廉価版リメイクという赴きの作品になってしまった
火星人をそのものズバリと見せてしまっては、どんなに頑張ってもチープさが漂ってしまう
火星の人面岩のモチーフを持ち込むのもそうだ
だから、ジムが遥か宇宙に旅立ってもそこには、ああ面白かった!はあっても感動はない
知的興奮も薄いものしか得られないからだ

しかし、後年にオデッセイとゼログラビティの製作に影響を与えたように、本作はそれだけのポテンシャルを持っているのは確かなのだ
それだけでも意義はある
観て損はない

あき240