ミッション・トゥ・マーズ : 映画評論・批評
2000年5月15日更新
2000年5月27日より日劇プラザほか全国東宝系にてロードショー
デ・パルマの新たなる“ミッション”とは?
火星を舞台とした映画がちょっとしたブームだが、その先陣を切る形で登場したのが、ブライアン・デ・パルマ監督初のSF作品「ミッション・トゥ・マーズ」だ。かなり露骨に「2001年宇宙の旅」へのオマージュとなっており、ストーリー構成を始め、宇宙船内の回転式遠心装置なども同様だ。ただ異なる点は、監督のビジョンを具体的に映像化する技術の大幅な進歩である。回転する船内は、複雑なカメラワークで立体的に捉えられている。また「2001年~」で、キューブリックが最後までこだわりながらも、適切な表現技法を見出すことが出来ずに見送った異星人も、堂々と登場する。
VFXを担当したILMの、アレックス・ラウラントのデザインによる火星人の姿は、キューブリックが思い描いていたジャコメッティの彫像風という表現にかなり近いと言えよう。何より今回の白眉は、謎の火星の古代遺跡から登場し、生物の様に動き回る竜巻の描写 だ。「ツイスター」や「ハムナプトラ/失われた砂漠の都」の砂嵐を連想するが、はるかに進んだCG技術が使われている。表面 の複雑な乱流の描写は、高度な流体力学計算があってこそ描けたものだ。担当したドリーム・クエスト・イメージズに敬意を表したい。
(大口孝之)