「映画で体験し得る恐怖の最高峰」ゾンビ Garuさんの映画レビュー(感想・評価)
映画で体験し得る恐怖の最高峰
ロメロ監督が生み出したゾンビ映画は、死人が生き返る原因と理由を明示しない。 「人間の集団性の恐ろしさ」 だけが表現されている。 ゆっくりと歩きながら迫ってくるゾンビたちそのものが、我々が潜在的に抱く集団に対する恐怖を象徴しており、恐怖心と不安感を本能レベルで揺さぶるのだ。
ゾンビに襲われた人間が、一人また一人とゾンビに変わり、仲間たちが、そして社会全体が徐々に人間性を失ってゆく。 生き残った人間も、閉じ込められた狭い空間の中へ追い詰められ、わずかな希望も徐々に失われていく。 自分も食い殺された末に同類になってしまう……という絶望感に追い詰められていくあの底知れぬ恐怖。 これこそが、ゾンビの恐怖体験だ。
「ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド」で、映画の世界にゾンビを登場させたジョージ・A・ロメロ監督は、 ゾンビ2作目となるこの「DAWN・OF・THE・DEAD」で、人間が映画で体験し得る恐怖の一つの頂点ともいえる地獄を演出した。
ホラー映画の金字塔となった 「ゾンビ」(邦題) が生まれた背景にあるのは、おそらく戦争と飢え、そして、全体主義社会の記憶ではないだろうか。
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