恋愛睡眠のすすめ : 映画評論・批評
2007年4月17日更新
2007年4月28日よりシネマライズほかにてロードショー
監督ミシェル・ゴンドリー本来の持ち味が全開
夢・恋愛・記憶・それに関わる超科学的な機械の登場など、前作「エターナル・サンシャイン」とかなりの共通点を持つ本作。しかし理の勝った脚本家チャーリー・カウフマンが不在であるからか、監督ミシェル・ゴンドリー本来の持ち味が全開。より緩やかなフォルムがもどかしくも心地よい。
一言でいえば、周囲の状況が読めないアート系男ステファンの恋愛妄想。惚れた女性の名はステファニー、相似形を成していかにも空想の産物ぽい。そこにナルコレプシー(睡眠障害)が大きく作用することで、現実と妄想はひと繋がりになっていく。
ステファンの世界ははっきり自閉的なものだが(オタクな感性といってしまってもいい)、そういえばかつてゴンドリーはビョークのPVで、統合失調症患者のテキストを元にしたルネ・ラルーの短編アニメ「猿の歯」を模倣したことがあった。クラフトマンシップ溢れるアニメーション(ゴンドリー自身の設立したスタジオによるもの)で表現される夢や、段ボール製の脳内TVスタジオなど、PV監督時代の作品に極めて近いテイスト。もちろん言語やコミュニケーションの問題を抱えるステファンは監督の分身に他ならないだろう。ハンサムなくせにおどおどしててモテないガエル・ガルシア・ベルナルが、どこかヌーベル・バーグ期のジャン=ピエール・レオを思わせ、愛おしい。
(ミルクマン斉藤)