劇場公開日 1999年11月27日

ゴースト・ドッグ : 映画評論・批評

1999年11月15日更新

1999年11月27日より日比谷シャンテシネほかにてロードショー

ジャームッシュの描く「サムライ・ブシドー」

画像1

「デッドマン」から4年。ジャームッシュが再び死に向かう男の話を描いた。それも、武士道を記した書物「葉隠」の一説「武士道とは死ぬ ことと見つけたり」を信条としている黒人の殺し屋の話だ。

サムライと言っても、日本人が想像する“侍”とはちょっと違う。ラップをBGMに殺しの現場へ向かえば、鮮やかな手つきで仕事を終え、刀で斬り終えたごとく銃いちいちを振り払って懐に収める。現代版サムライ、いや、伝書鳩で連絡を取る時代遅れのサムライだ。  ところがこの時代遅れが、笑いと同時に泣かせてくれるのだ。なんせ昔気質なので義理堅い。命の恩人であるマフィア・ルーイの命は決して狙わず、逆に彼ならばと、身を捧げる。で、一匹狼だが、子供と移民のアイス屋とは心を通 わせるという弱者に目を向ける優しい一面も。掟もルールもないこの世知辛い世の中で、武士道を貫くこの姿! まさしく古き良き日本映画を思い起こさせるサムライの姿が、ここにあるじゃないか。

確かに、作法や武術など「それって武士道か?」とツッコミたくなる箇所もある。まぁそこはひとつ、日本好きのジャームッシュに免じて、長~い目で見てやっておくんなまし。

中山治美

Amazonで今すぐ購入

関連ニュース

関連ニュースをもっと読む
「ゴースト・ドッグ」の作品トップへ