「異文化の深い交錯と邂逅」戦場のメリークリスマス バラージさんの映画レビュー(感想・評価)
異文化の深い交錯と邂逅
小説家のローレンス・ヴァン・デル・ポストが自らの実体験を反映させた、ジャワ島の日本軍捕虜収容所における日本軍人とイギリス軍人捕虜との邂逅を描く中編小説集『影の獄にて』を、大島渚監督が国際的キャストで映画化した日英合作映画。原作のうち、ハラ(ビートたけし)とロレンス(トム・コンティ)のエピソードを描いた『影さす牢格子』と、ヨノイ(坂本龍一)とセリエ(映画ではセリアズ。デヴィッド・ボウイ)のエピソードを描いた『種子と蒔く者』という別々の中編を組み合わせて構成されている(残る一編『剣と人形』のエピソードはロレンスが台詞の中でわずかに触れるのみ)。
大学時代に読んだ心理学者の河合隼雄の『影の現象学』でまず原作の一編『影さす牢格子』を知り、それから90年代前半から半ばぐらいにその原作を読んで、しばらくしてから本作がその映画化だと知ってビデオで観たという順番だった。『影の現象学』で紹介された『影さす牢格子』については、河合氏がスイスのユング研究所に留学中に分析医からすすめられ、読んで深く感動したというエピソードが素晴らしく、それで原作を読んだ。確かにとても良い小説だった。
映画は個人的には小説に比べればやや落ちるものの、それでもなかなか面白かった。坂本龍一による有名なピアノ音楽が印象的。公開時にテレビCMが流れてた記憶があるんだけど、今思えばあのたけしがどアップになって「メリークリスマス!」と言うシーン、映画のラストシーンなんじゃないかな? それをCMで先に流しちゃダメなんでは?(笑)
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