劇場公開日 2024年3月22日

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「公開当時はデヴィッド・ボウイと坂本龍一のキスシーンで大騒ぎした」戦場のメリークリスマス 山川夏子さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5公開当時はデヴィッド・ボウイと坂本龍一のキスシーンで大騒ぎした

2023年12月26日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

悲しい

この作品は、公開当時映画館で観て、パンフレットも関連の雑誌も全て購入、、サントラ盤もヴィデオも購入して、ボロボロになるまで観た作品です。

この映画が公開された当時、ビートたけしさんはテレビ界の覇者といえるくらい人気絶頂のお笑い芸人さんで、坂本隆一さんはYMOで「世界のSAKAMOTO」と呼ばれていました。だからこの映画は映画雑誌だけでなく、テレビのバラエティ番組でも、テレビの音楽番組・ラジオ音楽番組・音楽雑誌でも大きく取り上げられいました。ビートたけしさんが当時やっていたニッポン放送の「オールナイトニッポン」でも生放送で撮影秘話をどんどん話してくれるので、製作中から異常な高揚感とともに映画が公開されるのを待って、映画館に駆け込んだ記憶があります。

舞台は太平洋戦争当時の日本軍の捕虜収容所で、日本軍の捕虜の虐待は戦後問題になっていたそうです。敗戦色が濃厚で、日本兵の食糧さえ底をついた状況下で捕虜に食べさせる食糧がない状況下でも日本は降伏しない。

当時はゲイの映画だと騒がれましたが、大島渚監督作品だからゲイ映画だと短絡的にみなされている印象を持ちました。戦争は国と国の衝突で、個人という視点から見ると、見ず知らずの人間にいちいち殺意をいただくことはどは、単純に考えれば無いわけで、戦争は不条理な殺戮を個人に強いる行為だと私は考えます。

「殺戮を行わない」ルールがある場所で人と人が出会って、その相手が尊敬すべき人格だったら好意を抱いたり、性差を超えて恋愛感情をもつことは、なんら異常なことではないし、それをナチュラルに描いているだけで、ジャワ島の楽園のような美しい自然の中で、とても自然なこととして描かれていました。

異常なのは、食べ物がなくて大の男たちが日本兵も捕虜の外国兵も餓死直前まで耐えているという収容所の現実の方で、戦闘シーンがないのに、とても戦争の狂気を感じる大変な戦争映画でした。

坂本隆一さんがつけたこの映画映画「戦場のメリークリスマス」は傑作で、この作品で坂本さんはラストエンペラーの映画音楽を手掛け、世界的な作曲家として渡米されました。昨年癌でお亡くなりになられた坂本さんを追悼するとともに、リアルタイムで「戦場のメリークリスマス」の制作から公開、アカデミー賞受賞の瞬間まで、テレビやラジオで観ることができて、とても幸せな時代を過ごしたなあと思います。

山川夏子