「数十年ぶりの鑑賞で込み上げた思い」戦場のメリークリスマス 牛津厚信さんの映画レビュー(感想・評価)
数十年ぶりの鑑賞で込み上げた思い
数十年ぶりの鑑賞ということもあり、以前とだいぶ印象が違って見えた。例えば、坂本龍一が法廷でボウイを見てビビッと感じる時の思い。かつての私は、それは同性愛的な何かだろうと解釈していたが、今見ると、そんな次元すらも遥かに凌ぐ、非常に複雑で混乱した啓示だったように思えた。対するボウイはかつて弟に下した仕打ちが十字架のようにのしかかっている。彼もまた償う場所を求めさまよう旅人。収容所という場所でこれらの異質な思いが大きく渦を巻き、さらに狂気と無邪気さを持つビートたけしの存在が絶妙にハマる。演技が本業でない彼らだからこそ、素の境地をこれほど直感的、肉感的に表現できたのだろう。ちなみにローレンス役のトム・コンティは「ダークナイト・ライジング」にも出演。「戦場の」がノーランのお気に入りであることを考えると、同じ”牢獄でカリスマ性を持つ主人公と語らう者”としての起用には何らかの意図があったのかもしれない。
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