「謝意の劇中本が原作?」善き人のためのソナタ odeonzaさんの映画レビュー(感想・評価)
謝意の劇中本が原作?
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映画のキャッチコピーに「この曲を本気で聴いた者は悪人になれない」とありますがゲルト大尉が劇作家のドレイマンを助けたのは彼の恋人クリスタに横恋慕するヘムプフ大臣の好色な陰謀、上司や仲間の下劣さに嫌気がさしたからでしょう。
確かに本作の録音技術は秀逸で音楽シーンの音色の生々しさは格別ですが曲の演奏も短く曲が主題を担っているとは思えませんでした。かといって表現の自由と闘った演劇人のレジスタンス物語でもありませんね、政治弾圧に名を借りた下劣な品性の権力者の悪行は普遍的に存在するとみた方が良いかもしれません。
ドナースマルク監督33歳、西独出身なので東独の内情は壁の崩壊後に4年も調べてオリジナル脚本を仕上げたようです、映画にも出てきましたが当時の政府資料が閲覧できるとは驚きました。役者の名演にも助けられたのでしょうが初の長編デビュー作とは思えぬ重厚さ、才能が光っています。
ことの真相を知ったドレイマンがゲルト大尉に逢って礼を言おうとしますが思いとどまります、2年後に本の形で謝意を表しますが痺れます。メール配達人に落ちぶれた彼をおもんばかったのかもしれませんし、月並みな礼では済まないと悟ったのでしょうか、その本が巡り巡って映画の原作めいて、主題の巡るソナタ形式にも思えました・・。いつもながらドイツ映画は渋いですね。
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