「温故知新」セブン マスゾーさんの映画レビュー(感想・評価)
温故知新
デビッド・フィンチャー
1962年コロラド州デンバー生まれ
ILMのアニメーターを経て映像会社を設立
著名アーティストのMVを作成しながら
1992年に26歳の若さで「エイリアン3」の
監督に抜擢されるがこれは挫折の連続
その次作がこの「セブン」で
大成功を収め名声を手にし
今でも一線級で活躍
「ゲーム」「ファイトクラブ」
「ベンジャミン・バトン」など
傑作のメガホンを握った
父親がライフ誌の記者だったことも
あるのか作中に社会問題を投影する
場面が多い
高校生の時観に行った今作
ほぼそれ以来くらいでしたが
やはり面白かった
やはり名作は寝かせて寝かせて
自分の変化があってから観ると
感慨が変わります
アニメや漫画にオマージュ
されまくったメッセージ性をもつ
サイコサスペンス
今見るとベタすぎて観てらんない
かもと少し思ってしまいましたが
全然そんなことなく
むしろ公開当時ネットのネの字も
なかった世界と今のネット時代の
共通性すら感じました
まず舞台が「どこかの大都市」
で具体的な地名がない
荒れ果てた治安で
凶悪な犯罪が繰り返され
もう1週間で定年を迎え
もうこの凄惨な世界を見るのが
つくづく嫌になっているサマセット
そこへ新任された
犯罪者を捕まえて名を挙げたい
若い刑事ミルズ
そこで起こった「七つの大罪」
を基にした一連の事件
このフィンチャー監督特有の
漠然とした世界観だからこそ
暴食(Gluttony)
強欲(Greed)
怠惰(Sloth)
傲慢(Pride)
色欲(Lust)
嫉妬(Envy)
憤怒(Wrath)
のキリスト教における
「人を死に至らしめる7つの大罪」
の存在感が引き立っているんだなと
今回すごく感じました
欲望のままに他人を攻撃し騙し
逃げ回り際限なく卑猥なコンテンツが
現れ攻撃されたものは憤怒する
それを「仕方が無い」と思うか
「頭がおかしい奴」と思うか
「正さなければならない」と思うか
サマセット・ミルズ・ジョン
この3人で役割が分かれています
そして互いに共感できそうでできない
ネット空間と何ら変わりが
ないものです
フィンチャー監督の先進性には
驚かされるばかり
後にネット社会そのものがテーマの
「ソーシャル・ネットワーク」
も撮ってますしね
確かに粗も感じるとこはあります
トレーシーのサマセットへの
アプローチはなんかつっけんどんだし
傲慢で殺されたモデルも取って付けた
感じ(まぁ予定を急に変えたとは
言ってましたが)
自首したあとの弁護士の要求も
このやりとり録音してたら
まったく無意味じゃんと思って
しまいます
ラストに向けての間に合わせ感は
もう少しじっくりでもとは
思うところはあります
特有のノワールな色調の映像が
リマスターIMAX上映で暗部のトーンが
細かくなったことで印象が変わりました
この映画で名を挙げたケビン・スペイシー
既に新進気鋭で今も活躍するブラッド・ピット
ほんと仕草などからキャラ付けをするのが
この頃から神がかかっています
CGなんかない時代のSFXの到達点
とも言える名作
おすすめです