「それでも戦ってほしいと願うラスト」セブン ソロモンさんの映画レビュー(感想・評価)
それでも戦ってほしいと願うラスト
賛否両論なラストと聞いて、正直それは大げさだと思えるものがしばしば。しかしこの作品のラストは様々な葛藤が頭の中でグルグルと回ってしまいました。それぐらいこの作品のラストは見ている者、そして登場人物たちを困惑さするものだったと思います。
七つの大罪を基にした連続殺人を二人の老刑事と若刑事が追うサスペンス映画といった感じです。そして連続殺人の手掛かりとパターンを見つけてからはまるで全力疾走のごとく展開が進みどんどん引き込まれていきます。そして迎えるラスト。
重圧感がある暗いサスペンス映画と聞いていたので序盤の雰囲気は意外なものでしたが実はこれらはラストに向けての序章に過ぎず、登場人物たちに感情移入を思う存分させておくことでラストのメッセージ性を高めるつくりは見事としか言いようがありません。
深みのある人間味を出すモーガンフリーマンさんと感情的な若者らしさを存分に出すブラットピットさんのやり取りは妙にぎこちなさが出て雰囲気があってよかったです。ブラットピットさんに関してはハリウッドスターとしての彼しか見てなかった気がしたので、今作の彼は初々しさがありどことなく新鮮。
そしてその二人のやり取りの内容もほとんどがラストに繋がるものばかり。「今の犯罪にはついていけない」と疲れを見せる老刑事サマセット、刑事としての職務を全うしようとするミルズ刑事。そんな彼らをまるであざ笑うかのような連続殺人犯とあまりにも酷い殺人計画の最後。
あの結末は悪を根絶しようとする者にはまさに後味の悪い結末だと思います。どれもが関わりたくないと思える犯罪とその狂人の犯人に勇敢に立ち向かった二人の刑事にとっては余りに不釣り合いな結末だったと思います。
見ている者も人の努力をあざ笑うこんな狂った世の中で戦う価値なんてあるのかと思ってしまうのではないでしょうか。
しかし個人的にはやはりあの人にはもう一度立ち直って戦って欲しいと願うばかりです。サマセットが言う最後のセリフはあの結末に僅かな光を与えたと思います。何事もハッピーエンドが来るわけではないけどやはり戦う人間は必要だと・・・。
様々な価値観が崩れ去るようなラストとスピーディーあるサスペンス。人に勧めるにはためらう映画ですが、衝撃度はダントツの映画だったと思います。