「「色々ありすぎて混乱してる」・・・そりゃ観客も一緒。いつクネクネダンスが見られるのか期待した人も多かったに違いない。」THE 有頂天ホテル kossyさんの映画レビュー(感想・評価)
「色々ありすぎて混乱してる」・・・そりゃ観客も一緒。いつクネクネダンスが見られるのか期待した人も多かったに違いない。
『グランド・ホテル』(1932、米)に最大級のリスペクトを捧げていて、文字通りグランドホテル形式の映画です(限定された空間が舞台となる群像劇)。当時のポスターを写真立てに入れたり、スイートの部屋名にガルボなど出演者たちの名前をつけているほどなのです。しかも映画の中でしっかり説明しているので、映画批評家の先生方は困るに違いない。それよりも『グレムリン』が気になる・・・
さすがに超売れっ子の脚本家・三谷幸喜の作品だけあって、単純に笑えて十分に満足のいく作品でした。有名俳優が多いためか、136分の長さと登場人物の多さもそれほど苦にならず、人間関係と小さな事件が笑いとともに絡み合ってゆく構成を考えた三谷氏に嫉妬さえ感じてしまいそうでした。
自殺しようとしたり、絶望感を味わった人たちが新しい年を迎えるにあたって希望を持って再生するテーマと、細かな伏線のバランスがいい。香取慎吾が持っていた“幸福を呼ぶ人形”が次々と人に手渡される繋がり、クネクネダンス、副支配人の嘘は期待を裏切らない面白さ。そして、3人の歌手(香取、西田、YOU)がとてもユニークで、役所広司の音痴ぶりと戸田恵子の上手さが光っていました。これに松たか子が歌で参戦するとシャレにならなかったかもしれない(彼女の片言の日本語は最高でしたよ)。演出面でも、舞台劇の良さを生かしたシーンがあったり、長回しのシーンがあったりで、全体的に引き締まっていました。大画面のメインではない目立たない部分でもしっかり演技していた俳優がいたことに脱帽です・・・
舞台監督と舞台演出家の違いなどの説明があることからも、主人公の副支配人はまさしく三谷幸喜の代弁者。「お帰りなさいませ」と客を迎える方針はどこかで聞いたことがありますけど、お客様に対して暖かく接する商売が少なくなっているといった現代社会への反省をも表現したのかもしれません。
【2006年1月映画館にて】