タイフーン : 映画評論・批評
2006年4月4日更新
2006年4月8日より丸の内TOEI1ほか全国東映系にてロードショー
韓流の独自性は屈折した想いを掘り下げたドラマにこそ
民族分断の悲劇を背景に、愛や絆を信じる者たちの想いがほとばしり、アクションが悲壮感を煽り立てる。そんな「シュリ」以来の韓流活劇大作が、またまたバージョンアップ。主人公は少年期に脱北を図った際、南北両政府から見捨てられた過去をもつ海賊。両親は惨殺され、姉と生き別れ、復讐の矛先を南北両国へ向ける。その企ては映画的には素晴らしい。何しろ核廃棄物を台風に乗せ、朝鮮半島全土に撒き散らそうというのだから!
立ち向かうのは、米特殊部隊の経験もある韓国海軍のエリート将校。過酷な運命を背負った役者陣の身体表現には眼を見張るものがある。アクション描写も洗練されてきた。しかし、2つの要素がどうにも噛み合わない。
「恨」と呼ばれる怒りや憎しみや無念さが入り混じった民族特有の感情。その発露が、視覚的に派手なクライマックスへ昇華していく過程に無理がある。善悪の構図が明快ならば壮大なバトルで溜飲も下りるが、「恨」の対象は単純ではない。分断をもたらし、統一を阻むものこそ主人公の真の敵であろう。ハリウッド志向は理解できるが、半島を亡きものにしようとする屈折した想いを掘り下げたドラマこそが、韓流の独自性を高めていくはずだ。
(清水節)