劇場公開日 2006年7月22日

トランスアメリカ : 映画評論・批評

2006年7月18日更新

2006年7月22日よりシネスイッチ銀座にてにてロードショー

主演フェリシティ・ハフマンが出色

「トランスアメリカ」で大きな注目を浴びるのは、女優のフェリシティ・ハフマンだろう。彼女は、女性になる手術を控えた男性という役柄に挑戦し、ユーモラスで説得力のある人物像を作り上げた。しかし、この主人公ブリーの存在感は、ダンカン・タッカー監督の鋭い洞察に満ちた脚本の賜物でもある。

ブリーは、手術費を稼ぐため、レストランの皿洗いとテレフォンアポインターを掛け持ちしている。それはどちらも他者の目に触れない仕事であり、彼女には友だちもいない。彼女は、見えない存在となり、完全に女性になったら、過去を捨て、ゼロから人生を始めようと考えている。その姿勢は息子のトビーと対面しても変わらないが、ふたりの旅はブリーを、実家=彼女が男だった世界に導く。

その家族、特に母親とのやりとりからは、ブリーが見えない存在になった原因が見えてくる。かつて息子を自分の思い通りにできなかった母親は、今度は孫を思い通りにしようとする。そして、実家からニューヨークに飛び出したトビーは、実家からロサンゼルスに飛び出したブリーを理解する。タッカーは、性同一性障害を特殊な体験としてとらえるのではなく、他者から理解されない人間の不安や孤独を細やかに描き出しているのだ。

(大場正明)

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