「歪さが癖になる感じで唯一無二の独特な世界観の作品です。」スワロウテイル 松王○さんの映画レビュー(感想・評価)
歪さが癖になる感じで唯一無二の独特な世界観の作品です。
実はまだ観た事が無い作品だった事もあり、池袋の「新文芸坐」で「岩井俊二の世界」特集上映をされると言う事で観賞しました。
で、感想はと言うと、独特な世界観が癖になる感じですが、ストーリーに関しては色々と突っ込みどころは有るかな〜って感じ。
岩井俊二監督と言うと個人的には「Love Letter」や「ラストレター」の透き通る様な純粋な世界観の作品と言うイメージがありますが、その一方で荒唐無稽の様で混沌とした中の純粋な「何か」の世界観を醸し出す作品の両輪で、どちらにも言えるのはその世界観の中の「純」と言う言葉が醸し出される美しさなんですよね。
"円"が世界で一番強かった時代。一攫千金を求めて日本にやってきた外国人達が蔓延る「イェン・タウン」は様々な意味で"円都(イェン・タウン)"と"円盗(イェン・タウン)"と呼ばれる。
バブルをモチーフにしたとされ、イェン・タウンは日本でありながら、日本でなく、アジアの無国籍なイメージが充満している。
日本語、英語、中国語。また、それらを混ぜた様な人工言語的な言葉も魅力的で難解と言えば難解だけど、何処か厨二病をくすぐる感じがたまらんですw
オープニングとラストのナレーションがカッコいいんですよね。
作品の美術監督を務められた種田陽平さんが押井守監督との対話の中で作品の架空の東京をつくる際、参考になった映画は唯一『パトレイバー』だったと明かしているとの事ですが、そう言われると納得。
パトレイバーの世界観は年号が平成ではなく、昭和が続いている世界で、何処かノスタルジックでアナログ、それでいて無国籍な世界観がありますが、押井作品は何処か共通した世界観を持っているので、「攻殻機動隊」や「スカイクロラ」「アヴァロン」にも共通した感があるんですよね。
今から四半世紀前の作品なので出演者も若い。三上博史さん、CHARAさん、伊藤歩さん、江口洋介さんとキャスト陣も抜群。特に江口洋介さんの雰囲気は良いんですよね。
CHARAさん演じるグリコのイメージはそのまんま作品のイメージであり、CHARA = スワロウテイルと言っても過言では無いぐらい。
ホントCHARAさんの為に作られたのでは?と思ってしまいます。
独特な世界観が抜群の作品ですが、難点も有り。
作品が第一章と第二章的になっていて、前半の第一章的なのが好きなんですが、後半の第二章からはちょっととっ散らかり過ぎかな?と。
細々とした部分では粗さが目立つし、言わんとしている事も分かるんですが、どうにもどうしたいのかが粗いです。
現代日本の情景描写と戦後の様で中国の九龍城の様な雑居で場末感は所々で違和感を感じる。「でも大阪だったらこんな所あるよね」と言う感じがしなくもないですw
また、グリコがヒロインですが物語はアゲハの成長譚でもあるので、どっちつかずにも感じる。
全体的にイメージが先行しているので、そこに至る演出なんかも雑に映る。
そこに引っ掛かるとどうにも乗り切れない感じがしますが、そこを"それはそれ。これはこれ。"的に出来ると良いのかな。
また、主題歌でもあるYEN TOWN BANDの「swallowtile butterfly ~あいのうた~」も劇中には流れず、エンディングだけ。劇中に流れるのは「マイウェイ」。
この作品のイメージをそのまま表している様な曲なので、もう少し「swallowtile butterfly ~あいのうた~」を劇中でも流しながら大切に扱っても良かったのではないかと思ったりします。
その他に今では倫理観に引っかかって放送出来ない様な描写も多い作品ですが、この時代だから出来た。岩井俊二だから出来た。とも思えると懐かしくも愛おしく、唯一無二な作品です。
いろんな事を書きましたが、歪で粗い作品ではありますが、その歪さが味であり印象には多分に残る作品で、とにかく設定と世界観が独特かつ至高な感じが癖になります。
当時にリアルタイムで観ていたら、もう少し印象や感想は変わるかと思いますので、あくまでも一意見として捉えて頂ければ幸いです。