スミス都へ行くのレビュー・感想・評価
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最近観た昔の名作
見逃していた名作と言われている作品の一つ。やはり傑作だった。珍しく、同じ日に2回見てしまったが、何度も見てみたい映画だ。特に自分が落ち込んだ時に。
どうも自分はこういう正義のために闘う人を描いた物語には弱いんだな。
最後は十中八九ハッピーエンドになるとわかっていても、(倒れる直前の)彼の演説は感動する。とどめの故郷からの彼を非難する電報を見たときの彼の落胆ぶりと、その様子を見た秘書のクラリッサ・サンダースが「やめて」と泣いたときはこちらも泣けlてしまった。結局、彼を陥れた張本人(ペイン)が自分が不正を働いたと真実を話すのだが、ひねりやどんでん返しのない、やや安直すぎる結末だが、それが自然に納得できるのは、スミスのペインに対する演説が実に説得力のある、いわば迫真の演技だったためでもあろう。
主人公はスミスだが、彼と同じくらい重要な人物だったのがサンダースで、最初はそうでもなかったが、次第にいい女性だなと感じでくる(顔も内面も)。彼女がいなかったら、彼は戦わずして故郷に帰ってたであろう。最初の方で、彼女のおかげで、アメリカで法案が国会で成立される手順がよくわかった(今も同じかどうかはわからないが)。それに演技もうまい。特に表情だけで彼女が今何を感じているかがはっきりとわかるところが素晴らしい。
一つ不満を挙げるとすれば、最後のペインの発言でスミスが正しかったと証明されるが、スミスが過労で失神したまますぐにエンドロールになってしまうこと。もうちょっと引き伸ばして、余韻を楽しませて欲しかった。例えば、スミスがサンダースにプロポースするとか・・・
※印象に残ったセリフ
(スミスがサンダースに言った、元は彼の父の教え)
周りにある驚異を見落とすな。木も石も星もすべて自然の驚異に満ちている。暗いトンネルから光の中に出ると感動するね。いつもその感動を抱いて生きていくんだよ。
メディアを自在に扱える巨悪と民主的法律と女性秘書を頼りに闘う新米議員を描く米国映画の王道
闘う相手エドワード・アーノルド演ずるジム・テイラーの悪玉としてのスケールがなかなか凄い。ダム建設がらみの巨額の不正のみならず、州知事は勿論、次期大統領候補の地元上院議員、殆どの上院議員も味方につけ、偽証も自在で犯罪を捏造して主人公ジェムズ・スチュアートを責め立てる。あらゆる新聞も、地元市民の民意も、全て金と人脈の力で、主人公を潰す方向で動かす。悪として凄みとリアリティがあり、もしかしてこれ、実在モデルが有るのか。
その巨悪を前にして、一度は故郷に逃げ帰ろうとした見るからに頼りない主人公が、ベテラン女性秘書ジーンアーサーにリンカーン銅像の前で説得され、闘う決意を示す。ヒーロー然としていないところが実に上手く、まさにアメリカの理想的な個と個の姿。
秘書に教えられたフィリバスターの上院規則により24時間の演説を実施し、ぶっ倒れる
ジェムズ・スチュアート、及びただ一人応援するかの見える議長の姿勢は、米国民主主義の奥の深さを体現か。最後でも結局、上院議員の多くを味方にすることはできなかったが、傍聴者及び議事進行を援助する少年たちを味方につけ、地元上院議員に残っていた良心には訴えられ証言を引き出せ、辛うじて勝利。
殆ど負け戦であったところは、現実味が有り、骨太く上手いストーリー展開に思えた。米国民主主義を貫くには、それを称えるだけではダメで、個人個人の命懸けの闘いがいることを、分かりやすく示したエンタテインメントでもある作品で、これを産み出すフランク・キャプラ等の作り手の方々に痛く敬意を覚えた。
現在の日本の政治家たちへ
『スミス都へ行く』が政治家の映画だとは思わなかった。純粋な人物が周囲の助けも得て、巨悪に立ち向かう議会映画である。最後の最後にペインの良心が戻る所が大事だった所である。慣れてしまった人達をこそ動かせる事。または慣れてしまっている人達が気づく事。そうして動く。直近で思い出すのは、山本太郎議員が安倍晋三総理たちに立ち向かったような時を思い出したが、この映画と違うのは、安倍晋三総理たちは、変わらなかったと言う事であり、東日本大震災の経験後でさえ、日本はトップダウンで変わる事が出来なかった。こういう風に書くと反自民かと単純に思われてしまうような所こそが、頭が固着してしまった人達ばかりの日本という訳なのだ。そんな意図では無い。そんな人は与党だろうが野党だろうが、政治活動家だろうが蔓延した。昭和14年当時にアメリカが悩んでこのような映画が出来ていたのだから。それから別のこの国で随分月日が経過した
100年前の感性が理解できる人向け
棚ぼたで議員になったスミスと、悪の親玉テイラーと、
その間で揺れ動くペイン議員の3人を軸に
アメリカの正義と、困難に立ち向かい続ける勇気を描いた映画。なのだが…
今までなんの努力もしてこなかったスミスが、
怠惰をむさぼってきた人生の中でたった24時間だけ我慢して、
どこから湧いてきたのかもわからない白々しいアメリカの理想論をぶち上げただけで、
全国民がその努力を褒めたたえ、感動して涙する。
共感…できない。
せめてテイラーとの攻防自体に面白みがあれば楽しめたろうが、
駆け引きもないただの我慢比べだし。
しかも、負けたところで元の生活に戻るだけというノーリスクの戦いである…。
これだけアメリカ万歳な内容ならアカデミー賞レースは賑わすだろうが、
民主主義や正義を主張すること自体に価値のあった頃の映画として歴史的な意義や
普遍性はあっても、そこを考慮しないとすると、ただただアメリカの理想論、アメリカの良心を
ゴリ押しするだけの内容である。
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