「メディアを自在に扱える巨悪と民主的法律と女性秘書を頼りに闘う新米議員を描く米国映画の王道」スミス都へ行く Kazu Annさんの映画レビュー(感想・評価)
メディアを自在に扱える巨悪と民主的法律と女性秘書を頼りに闘う新米議員を描く米国映画の王道
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闘う相手エドワード・アーノルド演ずるジム・テイラーの悪玉としてのスケールがなかなか凄い。ダム建設がらみの巨額の不正のみならず、州知事は勿論、次期大統領候補の地元上院議員、殆どの上院議員も味方につけ、偽証も自在で犯罪を捏造して主人公ジェムズ・スチュアートを責め立てる。あらゆる新聞も、地元市民の民意も、全て金と人脈の力で、主人公を潰す方向で動かす。悪として凄みとリアリティがあり、もしかしてこれ、実在モデルが有るのか。
その巨悪を前にして、一度は故郷に逃げ帰ろうとした見るからに頼りない主人公が、ベテラン女性秘書ジーンアーサーにリンカーン銅像の前で説得され、闘う決意を示す。ヒーロー然としていないところが実に上手く、まさにアメリカの理想的な個と個の姿。
秘書に教えられたフィリバスターの上院規則により24時間の演説を実施し、ぶっ倒れる
ジェムズ・スチュアート、及びただ一人応援するかの見える議長の姿勢は、米国民主主義の奥の深さを体現か。最後でも結局、上院議員の多くを味方にすることはできなかったが、傍聴者及び議事進行を援助する少年たちを味方につけ、地元上院議員に残っていた良心には訴えられ証言を引き出せ、辛うじて勝利。
殆ど負け戦であったところは、現実味が有り、骨太く上手いストーリー展開に思えた。米国民主主義を貫くには、それを称えるだけではダメで、個人個人の命懸けの闘いがいることを、分かりやすく示したエンタテインメントでもある作品で、これを産み出すフランク・キャプラ等の作り手の方々に痛く敬意を覚えた。
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