劇場公開日 2023年12月1日

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「自分がナチスドイツの兵士と同じ状況に置かれていたら」戦場のピアニスト 根岸 圭一さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0自分がナチスドイツの兵士と同じ状況に置かれていたら

2024年2月18日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

ゲットー(当時のユダヤ人居住区)の衛生状態の悪さや慢性的な食料不足については本で読んだことがあるが、映像で観るとやはり衝撃的だ。他の人が持っていた缶を奪い取って、地面に落ちた缶の中身を舐めるシーンは、彼等の極限状態をよく表している。

ナチスの兵士が無理やりユダヤ人を踊らせ、嘲笑する屈辱的なシーンがある。このシーンを観るとナチスの兵士達はみんな性悪だったような印象を与える。しかしどの国でも人間の性質に大差は無いはずだ。反ユダヤ主義のイデオロギーに染まった人間は、元々普通の人間であっても、ユダヤ人に対する残虐な行為を正当化するようになるのだろう。

大臣のヨーゼフ・ゲッベルスがユダヤ人を「人ではない」と言ったように、ナチス・ドイツ支配下のユダヤ人は人間扱いされなかった。また、ナチスによる障害者の殺害に抗議する人はいても、ユダヤ人の殺害には無反応なドイツ人が多かったようだ。そのため、もし自分が当時のドイツ人だったならば、ユダヤ人に対する迫害に加担していた可能性もあると感じた。

根岸 圭一