「いとも容易く」戦場のピアニスト ke_yoさんの映画レビュー(感想・評価)
いとも容易く
きっかけは、たった一人の思想…
そこに色んな時代のうねりや人の欲望、政治の都合や人種・経済・各国の思惑が重なり、偶然の出会いが向いてはならない方に化学反応して、いとも容易く戦争と虐殺は起きた。
そしてごく普通の人だった多くのドイツ人がSSという化け物や、劇中でシュピルマンを捕らえるように叫んだ女性のように、それをしたら相手の命を奪うことになる言動を正義や責任だと疑いもせず、いとも容易く行なっていた。
このホロコーストという狂気。
数多のホロコースト作品の中でも、貴重な体験談を基にした映画で、昔DVDで観たときの衝撃は凄かった。
当時はホロコーストの知識がなく、ただただ、人の内面に潜む残虐性や戦争の恐ろしさに呆然となった。
その後の経験や、文献・映画などによるホロコースト自体の認識増を経て、今回は映画館にて鑑賞。
圧倒され、吐き気なのか分からない胸の痛み、目を逸らしたくなる数々のシーンに釘付けになった。
レビューには、詳しく知らないままシュピルマンを情けなく思っていたり、ホーゼンフェルトを助かりたいがためにシュピルマンのみを助けた偽善者のように書いていた人もいたが、なんと残念なんだろう。
ホーゼンフェルトは幾人ものポーランド人やユダヤ人を助け、死後は勲章を与えられている。
自伝をそのまま映画にするのは危険だと書いてるバカもいた。歴史を学べ愚か者よ。
この映画を観て、そんな感想しか出ないのが人間の一面なのだ。だから残酷にもなれる。
絶対に繰り返してはならないのだから、経験者の言葉や歴史的に意味のある作品は最早、単なる映画ではなく、今を生きる者として学ぶ教科書なのだと私は言いたい。
一人でも多くの人が、ちゃんとこの映画を理解してくれることを望む。