素晴らしき日曜日のレビュー・感想・評価
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日常の煌めき
・戦後の凄惨さは映像などでしか分からないけど、2人の境遇はインフラなど恵まれている現代と比べてみても惨めさなどは感情的には大差ないように思えて、貧富の差は人間社会の常なのだと切なくなった。
・最初から金がない日曜日なんてと暗い彼氏にそれでもいいじゃんと明るく振る舞う彼女の痛々しさがずっと続くけれど、日常の大半がこの繰り返しだと思ったのと、とにかく2人が普通の人すぎて、それを映画にしてどうするのかなくらいに途中くらいまで思ったけれど、クライマックスの観客に訴えかける音楽堂とラストで彼女を見送るシーンを観て、ようやく気づいたのが、これを日曜日の映画館で観ていたら、あぁ明日も頑張ろう、日曜日にまた彼女と会うため、とか希望を抱いて貰いたいっていう事だったんだと。映画の世界と現実とがクロスした感覚がしてとても良かった。音楽堂のシーンを観てプリキュアはこれを参考にしたのかなと思った。
・あからさまなダフ屋、喫茶店でメニューにない料金に驚いたのと引いたけど、戦後すぐってもっとエグそうだからまだ優しい方なのかなと思った。
・2人がパン屋を始めようって言って希望を抱いていた。あの時にインボイス制度があったら、2人はパン屋始めてたのかなとか思った。
格差社会への静かなる怒り
DVDで鑑賞。
戦後間も無い東京、2月のとある日曜日にデートする若いカップル。ふたりの持ち合わせは全部足しても35円(現在の貨幣価値に換算すると3500円とのこと)しか無く、あまりにも乏しい。さて、今日は何をしようか?
どこに行ってもつきまとって来る金の問題と貧富の差。現代にも通じる問題であり、若いふたりにとっては生き死にに繋がる切実な問題が浮き彫りになっていきました。
第四の壁を越えて彼らが語り掛けて来る場面はかなり実験的ながら、黒澤明監督からの格差社会に対する激しい怒りのメッセージが感じられ、心震わす名シーンだと思いました。
帰りの電車を待つラストシーン。「貧乏なんかに負けてたまるか!」と云う意思に満ち、明るく生きようとするふたりの行く末を暗示するような印象的な場面でした。
しかし明るいことばかりではなく、辛いことや残酷なこともたくさん降り掛かって来ると云う不安も抱かせるような巧みな演出が垣間見え、さすがだなと思いました。
[余談]
格差社会への怒りはやがて「赤ひげ」へと結実する…
※修正(2023/04/10)
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