SWEET SIXTEENのレビュー・感想・評価
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社会問題に深く切り込む丁寧な演出と、若手のフレッシュな感性が相まった秀作
ケン・ローチの作風は00年代に入って若手のフレッシュな感性も相まって新たな魅力を獲得した。もうすぐ16歳のリアムを主人公に据えた本作も、その代表格といえるだろう。
ローチ作品の主人公はそれぞれ深刻な事情を抱えているが、今作は息子が母のために何かしてあげたいという思いが全編を通じて痛いほど伝わってくる。しかし彼は環境という名の「檻」から這い出るチャンスをつかむことができない。また、彼の倫理観の中では母への思いの方が先行し、自分が売ったドラッグで誰かが不幸になるジレンマからあえて目をそらしている。つまり、目をそらすだけの葛藤が、まだ彼の中に存在するということだ。それは「救い」のようにも思える。
こうしたドラマが丁寧に構築され最後まで目が離せない。そして運命の瞬間。我々はまたも「どうして!?」というやるせない余韻を抱え、こうした案件が多数巻き起こる現代社会について深く考えさせられるのである。
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本当の凄さ(世界の見え方)
リアリズムに徹した残酷な青春
環境が人を作る
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切ない物語だった。誰か一人でもリアムを抱きしめてあげる人がいればと思った。
環境が人を作る。周りの人で、10代の未熟で真綿のように全てを吸収してしまう子どもの道は決まってしまう。リアムだって、母に対する愛情、姉と甥っ子を思う父性、友達を守る友情、こんな優しい良い子が違う環境だったら、良い男になって素敵な道を歩んでもっと良い立場が待っていたかもしれないのにと思ってしまう。
実際悪い事はしてるけど、15の彼の受け皿には金しかなくて善悪の判断も付かず、悪ぶってるだけで彼の時々発する優しい言葉に切なくなった。
ラストの「もうバッテリーが切れそうだ」は携帯ではなく自分の事を言ってるようで
切なく胸に響いた。
描写表現が見事な秀作。
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