SWEET SIXTEENのレビュー・感想・評価
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社会問題に深く切り込む丁寧な演出と、若手のフレッシュな感性が相まった秀作
ケン・ローチの作風は00年代に入って若手のフレッシュな感性も相まって新たな魅力を獲得した。もうすぐ16歳のリアムを主人公に据えた本作も、その代表格といえるだろう。
ローチ作品の主人公はそれぞれ深刻な事情を抱えているが、今作は息子が母のために何かしてあげたいという思いが全編を通じて痛いほど伝わってくる。しかし彼は環境という名の「檻」から這い出るチャンスをつかむことができない。また、彼の倫理観の中では母への思いの方が先行し、自分が売ったドラッグで誰かが不幸になるジレンマからあえて目をそらしている。つまり、目をそらすだけの葛藤が、まだ彼の中に存在するということだ。それは「救い」のようにも思える。
こうしたドラマが丁寧に構築され最後まで目が離せない。そして運命の瞬間。我々はまたも「どうして!?」というやるせない余韻を抱え、こうした案件が多数巻き起こる現代社会について深く考えさせられるのである。
本当の凄さ(世界の見え方)
初見時、ラストシーンの海辺に立つ主人公の顔のキズ跡を見て気付いてしまった「この子も含めて、素人に演出をつけて演技させていたのかよ…映画監督、映画ってなんて凄いんだ!」自分が16歳だったなら映画関係の仕事に就こうとしただろう....ものすごい感動だった。
映画の、いやすべての制作物の見え方を変えてくれた作品。ケン・ローチは偉大な監督です。
リアリズムに徹した残酷な青春
スコットランドの地方都市を舞台に、麻薬組織の世界に足を踏み入れた15歳の少年を主人公にした青春残酷物語。特殊な家庭環境でも完全な不良にならない主人公の説明は、投獄されている母への純真な息子心で描かれる。それ以外は現実的で、ローチ監督の冷徹なリアリストの視点は終始一貫している。
現実の世界を忠実に克明に構築する徹底振りには感心する。しかし、ドラマとして人間を描く点で物足りなさもある。
環境が人を作る
切ない物語だった。誰か一人でもリアムを抱きしめてあげる人がいればと思った。
環境が人を作る。周りの人で、10代の未熟で真綿のように全てを吸収してしまう子どもの道は決まってしまう。リアムだって、母に対する愛情、姉と甥っ子を思う父性、友達を守る友情、こんな優しい良い子が違う環境だったら、良い男になって素敵な道を歩んでもっと良い立場が待っていたかもしれないのにと思ってしまう。
実際悪い事はしてるけど、15の彼の受け皿には金しかなくて善悪の判断も付かず、悪ぶってるだけで彼の時々発する優しい言葉に切なくなった。
ラストの「もうバッテリーが切れそうだ」は携帯ではなく自分の事を言ってるようで
切なく胸に響いた。
描写表現が見事な秀作。
若さゆえに単純。
未熟ゆえに複雑。
刑務所の母のために悪に手を染める少年。
その気持ちが純粋で真っすぐなだけに切なくなってくる。
15歳という年齢のわりに、かなりしっかりしている印象は残るが、少年らしい若さゆえの無謀さから生じる日常はとても痛々しい。
ヨーロッパ映画らしい描写が不安定な若者の心情を生々しく表現しており、なかなかの秀作。
ただ、ベースの雰囲気が暗いため、単純な青春映画としては楽しめない。
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