サウンド・オブ・サンダー : 映画評論・批評
2006年3月28日更新
2006年3月25日より丸の内プラゼールほか全国松竹・東急系にてロードショー
職人ハイアムズが異色テイストで映画化
タイムマシンで白亜紀に向かい、恐竜狩りのスリルを楽しむ。そんな夢が実現した近未来。あるハンターの犯した些細な失敗が、地球の歴史を大きく変えてしまう。
レイ・ブラッドベリが半世紀以上も前に発表した短編「雷のような竜」は、当時は時間テーマSFとして画期的なアイデアで、その語に現実の学問でカオス理論や多世界解釈へと発展したのだが、基本的にはワン・アイデア・ストーリー。この原作を忠実になぞりながらも、映画は、白亜紀の過失で発生したタイムウェーブ(進化の波)による人類の退化・滅亡を、いかに防ぐかにポイントを置いたスケールの大きなアクション・アドベンチャーへと変貌し、なかなか楽しませてくれる。
企画当初、レニー・ハーリン監督、ピアース・ブロスナン主演だったがこの作品の交代劇の末、監督に落ち着いたピーター・ハイアムズは、さすが職人、きっちりとツボを押さえた演出ぶり。「2010年」以来の監督の盟友シド・ミードが、未来世界のコンセプト・デザインに参加しているし、改変進化で生まれた怪物の造型などのVFXも、ヨーロッパ調の異色なテイストがあり、いろいろ発見できるB級エンターテインメントに仕上がっている。
(高橋良平)