シモーヌ : 映画評論・批評
2003年9月2日更新
2003年9月13日より日劇3ほか全国東宝洋画系にてロードショー
上品でスタイリッシュだが、何かが足りない…
デジタル・アクターに振り回されるマスコミや大衆。多くの人が考えただろうこのアイデアをストレートに撮ったのがSFファンタジー畑の監督アンドリュー・ニコル。彼らしい冷たい映像、彼らしい虚構の世界。役者もパチーノ以下、何かと話題のウィノナや「ファム・ファタール」のレベッカまで揃えて豪華ではある。もちろん、虚構の都、ハリウッドへの皮肉はたっぷりだし、スターを崇める大衆にもそれはたくさん振りかけられている。
が、それでも何かが足りない。笑いが爆発することはなく、印象はと言えば慎ましやか。どの皮肉もハマって当然なのに、ビンビンと響いてこない。これっぽっちもコンピューターが似合わないパチーノが、パーフェクトなデジタル・アクターを思いのまま操作して映画を作ること自体、笑いのキモにもかかわらず、いまいち笑えない。彼がデジタル・アクターに振り回されることになっても、その皮肉が浮かび上がってこない。
これを見るとニコルがとてもお上品な監督だということがわかる。スタイリッシュできれいで慎ましやか。そう、ニコルに足りなかったのはハリウッドを笑い飛ばす豪快さと悪意なのだ。
(渡辺麻紀)