白くまになりたかった子ども : 映画評論・批評
2004年7月1日更新
2004年7月10日より恵比寿ガーデンシネマほかにてロードショー
氷の世界のハッピーエンド物語
アラスカの氷河で見たアイスブルーは心に残っているが、その微妙な色と美しさをアニメーションでここまで感じさせてくれるなんて、スゴすぎる!!透き通った氷の世界を舞台にした、白クマ少年の物語。暑さを忘れてしまいそうな、ひんやりとした空気感につつまれます。
クマやカラスがチャーミングなフランス語を話すので、最初はファンタジーな雰囲気。やがて、生きる意味をやわらかく語りかけてきて、心にずぅーんと響きます。白クマの住む北極圏には人間とクマが同じ言葉を話したり、人間がクマと結婚する神話もいろいろ。太古の昔には大自然で生きる者同士、「心の会話」が存在したかもしれないと思うだけで、ちょっとワクワク!です。
白クマに育てられた少年は試練を克服してクマに変身。でも、人間の母の愛に呼び覚まされて元の姿に戻ります。けれど、ガールフレンドの少女クマへの愛が強くなった時、再び、白クマになりたい!気持ちを抑えられなくなる……少年を本当に変えるのが人間の母への愛でなく、少女クマへの男としての愛であることが愛おしくて、切なくて。氷の世界を溶かすほど、心は熱くなるのでした。
(藤原ようこ)