「砂の器」スカーフェイス ストレンジラヴさんの映画レビュー(感想・評価)
砂の器
"THE WORLD IS YOURS"
午前十時の映画祭14にて鑑賞。
ハワード・ホークス監督「暗黒街の顔役」(1932)をブライアン・デ・パルマ監督、オリバー・ストーン脚本で脚色。1980年に起こったマリエル難民事件を題材に、キューバからアメリカに移住した青年トニー・モンタナ(演:アル・パチーノ)がギャングとしてのし上がり、やがて破滅していく様子を描く。
カルト的人気を誇る本作だが、さすがに朝からチェーンソーはキツかった。あと、上映時間170分も必要だったのかはやや疑問。ただしこれに関しては僕とデ・パルマ監督との相性の問題も多少あると思う。
’80年代以降のデ・パルマ監督作品が僕はどうも苦手だ。これはこの時代の作品全体に共通するが、そもそもシンセサイザー全開のいかにもディスコディスコな劇伴が個人的に好かない。また、デ・パルマ監督の真骨頂は「高低差を利用した銃撃戦」にあると思っていて、本作もその点ではデ・パルマ節が遺憾なく発揮されてはいるが、逆にストーリーそのものにもたつきと軽薄さを見出してしまう。これは「アンタッチャブル」(1987)にも同じことが言えて、「もっと銃撃戦に全振りできるような題材にすればいいのに」と思ったくらいだ(その辺の毒が抜けて、ようやくまとまりを見せてきたのが「ミッション・インポッシブル」辺りなのか?)。あと20分短縮してくれればもっとよくなる気がする。
終盤にターミネーターみたいなのが出てきたのはともかく、脳筋全開でマシンガンをぶっ放すシーンは圧巻。そしてアル・パチーノ。「頭は切れるが野心が抑えられずに破滅する男」を演じさせたら彼の右に出る者はいない。誰もが羨むほどの大金を手にしながら庶民の幸せさえ実現できなかった哀れな男トニー・モンタナ。時折登場する母親の忠告は、恐らく分かっていても従えないものだったのだろう。そしていつまでも過去の栄光に縋りつき、周囲がどんどん離れていく中で迎えた幕切れは、展開といい場所といいどこか「サンセット大通り」(1950)のようだった。