劇場公開日 1984年4月

「カルト的な人気は今でもあるようだが。世紀の失敗作であることは間違いない。」スカーフェイス あんちゃんさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0カルト的な人気は今でもあるようだが。世紀の失敗作であることは間違いない。

2024年10月27日
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鑑賞方法:映画館

エンドクレジットで献辞がハワード・ホークスとベン・ヘクトに捧げられる。この2人は1932年の「暗黒街の顔役」〜原題は「Scar face」〜の監督、脚本のコンビであって、監督ブライアン・デ・パルマと脚本オリバー・ストーンがコンビを組んでリメイクに挑んだのが本作である。
当時はこの映画の評価は惨憺たるものであって、客入りもあまり良くなかった記憶がある。戦前から映画を観ている評論家らが存命で彼らハワード・ホークスマニアから冒瀆的に見えたのかもしれない。でもそれにしても今観てもあまり出来はよくない。
だめな理由としてはアル・パシーノの熱演にも関わらず、主役トニーの人物像がモヤッとしているところに尽きる。
「暗黒街の顔役」はアル・カポネを念頭に、シカゴを思わせる街場のギャングを描いたが、本作はキューバ移民のトニーを主役に中南米からマイアミにかけての麻薬密輸ルートに舞台を置き換えた。この描き方が実に表層的でテキトーなのである。デ・パルマはイタリア系、ストーンはユダヤ系フランス人ルーツであって、全く知らない世界を描いている。つまり土俗的に説得力がないのてある。
トニーがチンピラの時代はまだ良い。だから前半のマイアミのアパートでの格闘シーン(チェーンソーが出てくるところね)はそれなりに迫力はある。ただ成功した後の邸宅のシーンはきらびやかながらハリボテっぽく(成り金趣味はそれで良いのだけど)キューバ系がアンダーグラウンドで成功したときのイメージがキチンと持てていないことが良くわかる。そこに「暗黒街の顔役」そのままの妹への偏愛や「The world is yours」のくだりをそのまま持ち込むものだからやや訳のわからない展開となってしまっている。
かといってデ・パルマらしいショットもほとんど観られないしね。
ミシェル・ファイファーのヒロインも魅力がない。あれにトニーが命をかける説得性はないと思うけど。

あんちゃん