シッピング・ニュース : 映画評論・批評
2002年3月15日更新
2002年3月23日より丸の内プラゼールほか全国松竹洋画系にてロードショー
きっと監督の北方の「血」が騒いだんでしょう
ニューヨーク州北部の小さな町の新聞社で、印刷工として静かに暮らす男、クオイルが、妻に捨てられたことをきっかけに、先祖の暮らした土地に行き、新たな人生の第一歩を歩み始める。ひらたく言えば、中年男の第二の人生探しの物語なのだが、本作はその枠内に収まっていない。なぜなら、彼がその地で出会うのが、お約束の心安らぐ自然だの素朴な人々だのではないからだ。
その祖先の地として登場するのは、ニューファンドランド島。カナダの東沖にある孤島で、寒さは厳しく、氷河に削られた岩肌には低木しか生えない。主人公クオイルの祖先は、この地に住み着いた古代スカンジナビアの海賊だ。先祖代々の家に住むことになった彼と娘は、土地の記憶とも彼らの幻想ともつかない光景を目にする。さらに、彼の叔母の子供時代のある種神話的な体験や、彼の雇い主の民話のような体験が語られていく。彼の再生に力を貸すのは、これらの神話的な原初の力なのだ。
ハルストレム監督は、スウェーデンのストックホルム生まれ。今までの作品とはひと味違う展開は、北の地に刺激された彼の祖先の血の為せるわざなのか、なんてね。
(編集部)