劇場公開日 2001年7月20日

「宮崎駿の表現力は5.0じゃ足りない」千と千尋の神隠し 77さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5宮崎駿の表現力は5.0じゃ足りない

2011年12月14日
フィーチャーフォンから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

怖い

難しい

歴代日本一の興行収入を誇る本作。そんな大評判を尻目に子供の頃の私は、カオナシとか湯婆婆というキャラクターの印象の強さばかりが残って【千尋の成長物語】以外の意味がわかってませんでした。

年齢を重ねて、どんなテーマだっけと気になってはいたけどまた観たいという気にもなかなかなれず、今回やっと10年近くぶりに改めて観てみると、遅ればせながらそこには“宮崎駿流”の現代社会(現代人)への思い(警鐘)が込められていることに気付きました。
お金、教育、売春、飽食、自然破壊、孤独、欲、自己、モラル…
そして目先のものに惑わされない本質や絆、思い出の暖かさ。

“トンネルを抜けたら非日常”
いくつになっても胸が躍らされるこの設定ですが千尋が偶然か必然か導かれたのは、画面越しにも異臭を感じるようなファンタジーというよりは悪夢みたいな世界。けれどそこでの“千と千尋”の経験は何物にも代え難く、最後にヘアゴムを光らせる彼女はもう地方に引っ越してきたことにふて腐れてる女の子ではなくて。
私が昔感じたように【千尋の成長物語】で間違いないしそれだけのことなんだけど、それだけじゃない。

絡み合ってて言葉で現すとお説教臭くもなる問題をこういう形として世に残したことは本当に素晴らしい。
色々詰め込みすぎな気もするし再度観ても私にはやっぱり大好き!!!というような作品ではないんだけど、讃えずにはいられない凄みがあるのです。宮崎駿の凄さをまた思い知りました。
例えば誰もが他人事じゃない“カオナシ”だって絶対私じゃああいう風に表現することを思い付けないし、【八百万の神様】という素敵な概念を持つ日本人ならではの発想の油屋もすごくいい。
中国っぽい建物は見てるだけで楽しいし、グロテスクな表現が多い中、魔法のわくわく感のバランスもさすがの一言。圧倒的な世界観です。

結局歳を重ねたってまだまだわからないことだらけだったけど、エンディングが全てを物語ってるような気がして子供の頃のもやもやはなくなりました。本当にジブリは何回か観て良さがわかるというか、観る度に色んな感性をつついてくれます。

77