劇場公開日 2001年7月20日

「地上での〝剣ヶ峰〟体験」千と千尋の神隠し グレシャムの法則さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0地上での〝剣ヶ峰〟体験

2020年7月1日
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鑑賞方法:映画館

過去に一度だけ富士山の、ということは日本の最高地点である〝剣ヶ峰〟に立ったことがあります。胸突き八丁と呼ばれる最後の800メートルほどの急坂を文字通り両手両足を使い、這いつくばりながらやっとの思いで山頂に着いた後、更に数キロ、火口に沿って登っていく〝お鉢巡り〟の先に、それはあります。
幸運なことに、天候と時間(休憩)と体力回復に恵まれたため、チャレンジする機会が得られました。
山頂でひと息、いや、ふた息以上ついてから更に1時間以上かけてやっと辿り着いたのが、かつての測候所付近にある日本最高地点、3776メートルの場所です。
その時、急に思い当たったのです。

うん?ちょっと待てよ。今この瞬間、日本の頂点にいるのは、もしかして私一人だけ⁉️

いわゆる富士山頂全体を通して考えても、その時、その3700メートルを超える高みにいるのは一億2千万人のうちの数百人程度の人たちだけです。
その高揚感たるや‼️
登山素人の私にとっては言葉にできないほどもの凄い感動体験でした。

『風の谷のナウシカ』
『もののけ姫』
『千と千尋の神隠し』

この三作品を短期間のうちに大きな劇場で連続鑑賞した直後の感情の高ぶりを表すのには、それしか思いつかなかったのです。
日本最高峰の三座(三峰)、富士山、北岳、穂高岳をひと夏のあいだに極めたとしたら……、
富士山以外の山を知らないので見当もつきませんが、
きっと、それぞれの頂きからしか見ることのできない景色は、これ以上ないような高揚感をもたらすことと想像します。

他の映画を挟まずこの3本を続けて観ることで、
なぜ豚なのか(マルコも豚を選んだ)。
なぜカオナシがヒトの欲望をいくら喰らおうとも満足できないのか、なぜ千尋に出会い導かれることでしか満たされないのか。
なぜ千尋やハクが名前を奪われ、取り戻すことが確固たる再生と成長の象徴になり得るのか。
そんな様々な命題について、あれこれ考える理屈より先に自分の中で、腑に落ちてくる感覚が生まれました。無論、初めてのことです。

宮崎駿監督がずっと思い続けていたことのほんの一部かもしれないけれど、もしかしたら感得することができたのかもしれない。そんな感覚にすらなりました。
(こういうおこがましいというか、独りよがりの幸福感、人によっては相当ウザいだろうな、と分かってはいるのですが、なるべく正直でいたいので🙏🏻)

今、この地上での〝剣ヶ峰体験〟は特別料金なので三本観ても3,300円。
感染防止対策が浸透しており、おしゃべりや飲食のガサつき音も少なく、いつも以上に集中して鑑賞できるのも今回の特長のひとつです。

よ・き・か・な。

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グレシャムの法則