シークレット ウインドウ : 映画評論・批評
2004年10月1日更新
2004年10月23日より日比谷スカラ座1ほか全国東宝系にてロードショー
ジョニー・デップのファンなら必見
スティーブン・キングは本当によく映画化されるが、映画化作品になかなか当たりが出ないことでも定評のある作家だ。その点でいえば、「シークレット・ウインドウ」もキング映画らしいヘタレ感はたっぷり。もともと原作も、まるで「ミザリー」をベースに誰かがキングっぽく仕上げた贋作のような薄味。ラストにはM・ナイト・シャマランがさかんにやっているような「一発オチ」があるわけだが、ヒネリがゆるく、意外性もイマイチだ。
ならばつまらないかというと、そうとも限らない。この映画はキング映画であると同時にジョニデ映画でもある。彼は映画を自分の色に染める役者だ。彼がこの作品で演じる作家は、寝癖のついた頭をボリボリかきながら、うだうだネチネチしているダメ男。こういうの、ジョニーは好きなんだなあ。どうでもいいような細かいところまでこだわりまくった彼の演技、これが実に楽しいのだ(サイコ野郎のJ・タトゥーロも、ハマりすぎでグッド)。
この映画に、何を求めるか。背筋の凍るようなサイコスリラーの醍醐味がほしいなら、この映画は笑えすぎる。しかし安っぽくも愛らしいB級映画ならではのお楽しみを求めるなら、きっと大満足できるだろう。もちろん、ジョニーのファンなら必見である。
(若林ゆり)