劇場公開日 2004年10月30日

「目覚めてませんか?貴方の野生」ソウ ダックス奮闘{ふんとう}さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0目覚めてませんか?貴方の野生

2011年3月21日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

怖い

興奮

本作で劇場映画監督デビューを果たしたジェームス・ワン監督が、ダニー・クローバーをはじめとした、きらりと光る俳優陣を起用して描く、元祖シチュエーション・スリラーの傑作。

下手にビデオカメラを寝室に仕掛けてみて、超常現象をじわーっと待ってみたり、宇宙人を秘密裏に隠して観察してみなくても、密室に人間をたった2人、投げ込んでみればよっぽど卑劣な劇が生まれるもんだ。

巧妙に、複雑な設定を持ち込んで四苦八苦する現代の作り手に対する挑発である。本当に怖いのは、毎日にちょっと嘘を抱え込んだ人間であり、その人間の狡猾さを知り、その形を描くことが出来る芸術家だと、改めて気付かされる。

一見、複雑に入り組んだ人間関係があるように思われるが、その根本にあるのは完全なる密室に、ぽいっと放り込まれた人間の崩壊である。

「自分がもし、こんな状況に置かれたら・・・どうするだろうか?」その単純な自問自答の答えに、強烈な残虐性が見えてしまったとき、本作が世の中に投げかける本当の恐怖が頭をもたげてくる。

シリーズを重ねるごとに新しさが要求され、巧妙な仕掛けがこれでもかと持ち込まれるようになっていくと、その純粋な悪意という恐怖を探求する姿勢は消えていくが、原点を見つめると、観客の本能を呼び起こすいやらしさが本来の魅力であることが分かる。

本作を観賞した後、自分の姿を鏡に映してみて欲しい。微かに、本当に微かにぎらぎらと野蛮に光る目の輝きに気付くはずだ。

本当に、怖いのは登場人物の真っ白な顔ではない。じっとりと陰湿な描写ではない。その世界に向き合って、目覚めてしまった貴方の野生なのかもしれない。

ダックス奮闘{ふんとう}