劇場公開日 2006年9月16日

パビリオン山椒魚 : 映画評論・批評

2006年9月12日更新

2006年9月16日よりシネセゾン渋谷ほかにてロードショー

世界が変わるのではないかという妄想を抱かせる映画

山椒魚がどれくらい長生きするのか知らないが、この映画では、150歳となる山椒魚を巡って人々が目を血走らせる。19世紀に開催された3度のパリ万博に、特別大使として出席したこの由緒正しい山椒魚は、しかし何をするわけでもない。ただそこにいるだけだ。何しろ3000万年前の地層から出土した化石も、現在と同じ骨格をもっているという「生きる化石」。

たとえばそれを、映画のスクリーンのようなものとして考えてみることが出来る。スクリーン自体は何ものでもない。そこにさまざまな物語が投射される。同時代の出来事、過去に起こったこと、そして遥か未来に起こるかもしれないこと。さらには現実にはあり得ないこと、お伽噺、夢物語、幽霊や怪物など想像上の生き物たちも登場し、死人さえも甦る。世界のすべてを遥かに超えた果てなき世界が、そこには広がっているのである。

人々がそれを手に入れようと必死になるのも無理はない。その目眩く世界が、この映画でも展開する。山椒魚を巡るサスペンス、ミステリー、ホームドラマ、アクション、そして愛と革命! あらゆるジャンルと人生がそこで交錯し、新たな世界への扉が開かれる。生命の歴史が変わる。そんな妄想を抱かせる映画である。いや、それもただそこにいるだけの山椒魚の罠なのかもしれない……。

樋口泰人

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