劇場公開日 2002年6月22日

「【”現代の戦争に勝者なし。”今作は、ベトナム戦争中期の壮絶な白兵戦となったと言われるイア・ドラン渓谷の4日間の戦いを描いた強烈な反戦映画である。】」ワンス・アンド・フォーエバー NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0 【”現代の戦争に勝者なし。”今作は、ベトナム戦争中期の壮絶な白兵戦となったと言われるイア・ドラン渓谷の4日間の戦いを描いた強烈な反戦映画である。】

2025年12月24日
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ー ベトナム戦争は、アメリカが初めて破れた戦争と言われている。物量共に圧倒的な兵力を誇りながら、北ベトナム軍のゲリラ戦法や、アメリカ国内の反戦、厭戦思想の蔓延により、ジョン・F・ケネディにより始められ、リンドン・B・ジョンソン、そしてニクソン大統領が撤退を指示し、終戦している。
  映画でも、多数制作されているが多くが反戦映画として描かれている。
  本作もそうである。-

■1954年。フランスによるベトナム植民地が終焉を迎える。その後、アメリカが介入し、特に共産主義化していくベトナムへ本格的介入をしていく。
 1064年。アメリカ陸軍基地では新兵たちの訓練が続けられていた。ついに出兵の時が訪れ、ムーア中佐(メル・ギブソン)は大勢の兵士の前で「戦地では自分が先頭に立ち、自分が最後に引き上げる。我々は全員揃って母国へ帰るのだ」と部下やその家族に誓うのである。そして彼らはベトナムの“イア・ドラン渓谷”へ降り立つのである。

◆感想

・多くのベトナム戦争映画では、ベトナム兵はベトコンと呼ばれ、姿はあまり見えず、時に農民を装って米兵を襲う神出鬼没の存在として描かれる。
 だが、今作では地下壕のベトナム将校が指揮を出すシーンや、一斉に米兵に襲い掛かって来るシーンや、亡くなった兵士が持っていた手帳に挟まれた恋人らしき女性の写真が描かれている。
 この作品では、ベトナム兵も人間として描かれているのである。

・戦闘シーンは激烈である。味方の空軍の誤爆により半身を炎で焼かれた兵士や、死に際に妻や幼子への想いを呟き息絶える兵の姿など。
 又、接近戦や白兵戦の描き方も、カメラに血が飛んでくるようなリアル感があるのである。

・亡くなった米兵の家族に対し、イエローキャブが通知を持ってきた事に怒ったムーア中佐の妻、ジュリー・ムーア(マデリーン・ストー)が、自らその手紙を軍用地に住む遺族の家に持って行くシーンも、リアルである。
 このシーンを見ていると、”現代の戦争に勝者なし。”と改めて思うのである。

・4日間が過ぎ、米兵は撤退する。そして山のように積み上げられたベトナム兵の死骸の山を観たベトナム将校は”酷い戦いだった。”と呟き、彼らの死体をベトナム兵が運んでいくのである。そして、この戦いを契機にベトナム軍はよりゲリラ戦に移行していくのである。

<今作は、ベトナム戦争中期の壮絶な白兵戦となったと言われるイア・ドラン渓谷の4日間の戦いを描いた強烈な反戦映画なのである。>

NOBU
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