ベティ・サイズモアのレビュー・感想・評価
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40年代とは違う
モーガン・フリーマン演じる殺し屋から主人公のベティに言われたこの言葉。ドラマの世界の主人公に恋い焦がれて彼を追いかけるベティに魅了された殺し屋はベティを殺せない。家庭に縛られテレビドラマの世界にしか夢を抱けない彼女に対して40年代のアメリカとはもう違う。夢を見て終わるのではなく夢を実現させろ、君は自由だと告げる。
40年代のアメリカは女性の社会進出が顕著になりだした時代。でもまだまだ女性は家庭で旦那を陰で支えるみたいな風潮が残る時代でもある。その後の50年代はまさにニューディール政策の恩恵にあずかった中流層が繫栄を迎えた時期で輝かしい男社会隆盛期、バックトゥザフューチャーの時代。そんな時代を女性たちが陰で支えた。
女性は日陰の存在、自分たちの夢は二の次で家庭に入り旦那や家族に尽くすことに選択肢は限られた。
本作はそんな夢を奪われた女性たちにエールを送るロマンティックコメディー。主人公のベティがカンザスから夢をかなえるためにロサンゼルスにやってくるが、彼女の抱いた夢は妄想でしかなかった。
それを知った失意のベティに殺し屋が冒頭の言葉を告げる。夢は君自身の中にあるからどこにいようともそれは実現可能なのだ。
そう告げられたベティは自分の描いた夢の中の住人として華々しく女優としてドラマデビューを果たす。彼女の夢は妄想ではなく実現可能な夢へと変わったのだ。
まさにオズの魔法使いのドロシーが旅を通して自信を得たようにベティもこの旅を通して自分の夢を実現してゆくのだった。
ドラマと現実の世界との区別がつかなくなったベティがとにかく可笑しい。また殺し屋親子の珍道中というロードムービー的な面白さも。
この頃のレニー・ゼルウィガーほんと可愛い。
「カンザスから出たことがない」「あんたドロシー?」
ダイナーで働くベティ。車を買おうと夫デル(アーロン・エッカート)に電話をするが、彼は浮気中。そんな彼女にはドラマの影響で看護婦になるという夢もあった。
夜になると黒人二人が家にやってきて、「ブツはどこだ」とデルを締め上げる。その犯人はダイナーの客で知っていたのに、犯人はドラマの中の女性の名前を言ってしまう。このフリーマンとロックのコンビがコミカルなのに残酷で、かなりのブラック仕立てになっている。彼らは目撃者であろう失踪したベティを追う。
友人との会話においてもドラマの話が多い。「カンザスから出たことがない」「あんたドロシー?」とか『ローマの休日』ネタとか映画もあったりする。そして、ドラマと現実の境目がわからなくなったベティは登場人物の外科医(グレッグ・キニア)を自分の婚約者だと思い込んで探し出す。看護婦の経験もないのに救急患者を助けたおかげでロスの病院で臨時に採用されるなど、かなりハチャメチャ。
テレビの主人公と出会ってからは完璧にドラマの中の世界に入ってしまい、テレビスタッフたちは彼女を役者志望だと勘違いする。しかし、そんなに簡単にはいかないもの。憧れの俳優と3日間の恋に落ち、そのままテレビ出演を試みるがセットを見た途端に現実に戻ったベティ。黒人コンビも彼女を探し当て、クライマックスへとなだれ込む。
意外と脇役の新聞記者ロイ(クリスピン・グローヴァー)がスパニッシュのベティのルームメイトと出来てしまう瞬時のカットが面白いし、ドラマに何回も出て看護学校に入り、ヨーロッパ旅行を楽しむエンディングが素敵です。フリーマンとロックが実は親子だったというオチもつくが、クリス・ロックはちょっとうざい(笑)彼もドラマに夢中になったため悲惨な結末を・・・
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