モンスーン・ウェディング : 映画評論・批評
2002年8月1日更新
2002年8月17日よりBunkamuraル・シネマほかにてロードショー
新旧インドをミックスさせた極彩色の愛絵巻
「ムトゥ 踊るマハラジャ」後のマサラ・ブームが終って登場したのが、ハーバード大卒の才媛ミラ・ナイール監督による家族ドラマ。デリーの裕福な一家のひとり娘が結婚式をあげるまでを軸に、家族愛や切ない恋など5つのエピソードを綴っている。
家族がアメリカやオーストラリアに散らばっている裕福な一族が主人公なせいか、全体的な雰囲気はかなり西欧風。家庭内で交わされる会話の大半が英語だし、インド映画に欠かせない歌や踊りを抑えたためもあるだろう。
が、それでもインドらしさを醸し出しているのが、スクリーンに広がる極彩色の色調。それは女性の衣装や宝飾品であったり、庭にしつらえた結婚パーティ用のテントや周囲に飾られたマリゴールドの花々だったり。また、物語を彩る人間関係や感情もカラフルだ。不倫に疲れ見合い結婚に踏み出すものの「これでいいの?」と悩むヒロインや金にセコイ割に恋にはシャイなウェディング・プランナー、小児性愛者のトラウマに悩む従姉妹などなど。
伝統的なインド式結婚式を背景にした現代風ドラマに家族の絆の大切さを浮かび上がらせ、笑わせてホロリとさせる。この新旧インドのテイストを融合させたスタイルは、まさにマサラ・ヌーボーと呼びたいほどだ。
(山縣みどり)